今後の研究の推進方策 |
2020年度には細胞を直接回収することなく培地成分を分析することで未分化状態のバイオマーカーとなりうる候補分子を見出した。ただ前年度に用いたELISA法では (1)感度がまだ不十分なこと、(2)最も簡素な構成培地であるE8培地の結果であり、広く利用されている市販培地で利用可能かどうか不明という問題点がある。 今年度は前年度に開発したELISA法の改良とヒトES細胞の培養に汎用的に使われている複数の市販培地(StemFit, mTeSR1, StemFlexなど)で評価を行う。現在ELISA法よりも感度が高い方法がいくつか開発されているが(ProQuantumイムノアッセイ、Luminexアッセイなど)、いずれも高価であり、本研究での予算規模を踏まえELISA法を改良し感度を高めることを目指す。具体的にはELISAに用いる抗体の種類、プレートの素材、検出試薬などの検討を行う。 また候補分子が未分化状態のバイオマーカーと利用可能であってもその細胞生物学的、分子生物学的基盤はほぼ不明であることから、以下の検討を行う。(1) 候補分子のプロモーター解析:候補遺伝子のプロモーターのどの領域がセンサー的な役割を果たしているのか、またプロモーター領域にヒトES細胞の未分化維持に不可欠なOCT4, NANOG, SOX2などの結合部位がないのかなどについて検討する。(2)候補分子のヒトES細胞への未分化維持・増殖に対する役割:候補分子を培地に添加する、CrisperやshRNA (siRNAも含む)を用いて候補分子の下流分子の発現を抑制するなどを行い候補分子が未分化増殖や分化抑制に直接的に関与しているかなどを検討する。 さらに本年度が本研究課題の最終年度であり、学会や論文発表に必要なデータをできるだけそろえる。また産業財産権取得の可能性についても専門家と協議を行う。
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