研究課題/領域番号 |
19K12757
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
福島 修一郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40362644)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 細胞走性 / 非線形光学顕微鏡 / マイクロ流体デバイス / デジタル画像相関法 / 腫瘍転移 |
研究実績の概要 |
本研究では,細胞走性に影響を及ぼす環境要因の解析が可能な3次元培養モデルの構築を目標とし.本年度は細胞の局所培養環境を制御できるマイクロ流体デバイス内の細胞および培養基質を可視化する観測系と,3次元変位場を定量化するための解析系を構築した, 当初の計画では非線形光学顕微鏡を用いて,培養基質であるコラーゲンゲルを第2高調波発生光で,染色した細胞を2光子励起蛍光で同時に可視化する予定であったが,入射する超短パルスレーザーによる細胞のダメージが避けれれなかったため,ランプ光源を用いた蛍光観測系を導入した.変形解析にはデジタル画像相関法を用いるので変形前後の2時刻の画像を非線形光学顕微鏡で取得するが.時刻間隔を適切に設定しなければ測定誤差が大きくなる.また,長期観測の場合は撮像回数を必要最小限に抑えることで細胞のダメージを軽減できる.そこで,非線形光学顕微鏡による撮像時刻間にランプ光源を用いて細胞の蛍光像を経時取得するための顕微鏡周辺機器(光源,シャッター,電動ステージ)の制御系を構築した. 観測対象の細胞はマイクロ流体デバイスの培養チャンバ内でコラーゲンゲルに内包された状態で培養し,細胞がゲル内を移動する過程の変形を解析する.細胞とゲルの変形を定量化するためには3次元の解析が必要となるので,既存の2次元デジタル画像相関法を3次元を拡張した解析プログラムをMATLAB上で構築した.培養チャンバの高さは 100 μm にしたので,高さ方向の細胞の移動を抑制した状態でゲル内の細胞遊走を観測できるようになり,3次元変形解析に必要な画像取得に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
非線形光学顕微鏡の制御ワークステーションが故障し,修理費が高額となったので次年度経費と合わせて支出する予定のため.
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今後の研究の推進方策 |
力学的な局所環境の制御を付加するために,基質の硬さが段階的に変化する傾斜構造培養基質の作製法を新たに開発する.コラーゲンゲルの硬さは,コラーゲンの密度やゲル化時のpHによって変化することが知られている.ゲル化前の密度またはpHが異なるコラーゲン溶液を接触させた状態でゲル化させると,境界部における拡散により密度またはpHの勾配が形成されて段階的に線維構造が変化するゲルを調整できる可能性がある.デバイスの培養チャンバの形状を最適化して傾斜構造ゲルを実現できるかを検討する. 力学的および化学的環境要因の複合環境制御型デバイスを用いた走性評価の対象として腫瘍細胞の組織浸潤や転移をモデル化する.ゲル内に播種した腫瘍細胞とゲル表面に播種した内皮細胞の共培養により,実質組織中の腫瘍と周囲の血管またはリンパ管を模擬した培養モデルを構築する.生理活性物質濃度,酸素濃度,基質構造の勾配の走性への影響を検討して走性の制御機序を明らかにして,腫瘍の転移抑制などに有用な知見を取得する.
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次年度使用額が生じた理由 |
顕微鏡制御機器の修理費が当該年度の交付額を超過したため,翌年度分と合わせて支出する.
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