最終年度は、抗炎症薬の塗布や抗原刺激回数の調整で、軽症-重症のアトピー性皮膚炎モデルを同一実験内で作製し、ミックスプローブを用いたDNP-MRI撮像解析から、臨床スコア別の14N tempolと15N CxPのラジカル減衰速度を算出した。両プローブ共に軽症から中症にかけて臨床スコア上昇と共に、ラジカル減衰速度が上昇し、臨床スコア中症(5-7/15)を頂点に、更なる重症化では低下する傾向を得た。本結果は2019年度の結果を再現した。 本課題では、反応性の異なるラジカルプローブを同時DNP-MRI撮像し、各々のラジカル減衰速度により、目に見えない表皮下のレドックス変化を数値化する事を目標とした。まず細胞内高透過性の14N tempol、細胞内非透過性の15N CxP、ミトコンドリア反応性のCoQ0の3種類でミックスプローブを作製した。各々のプローブのみにエンハンスメントを得る励起周波数を確定し、各々の励起周波数で順番にDNP-MRI撮像し、ラジカル減衰速度を得る事が可能となった。アトピー性皮膚モデルマウスでは、2.5mM 14N tempolと1.0mM 15N CxPのミックスプローブを用い、軽症時からラジカル減衰速度上昇として捉えた。中症から重症にかけて減衰速度上昇が留る傾向は、in vitroのプローブ反応とも相関した。一方血清IgE濃度、病理組織標本中の表皮・真皮層厚、抗酸化分子濃度などは正常から重症にかけ段階的に全て上昇した。しかし免疫染色組織標本の成熟マクロファージマーカーF4/80陽性細胞領域は、中症から重症への増加変化がなかった事から、マクロファージのROSが中症、重症時のラジカル減衰に強く影響していると考えた。DNP-MRI撮像解析は、早期の表皮細胞層、真皮細胞層変化を14N tempolで、血管透過性変化を15N CxPで評価する事に適すると思われる。
|