研究課題/領域番号 |
19K12760
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
中村 博亮 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (60227931)
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研究分担者 |
上村 卓也 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 客員研究員 (10597321)
高松 聖仁 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 客員准教授 (30295688)
横井 卓哉 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 病院講師 (90711820)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アンチエイジング / 免疫応答 / iPS細胞 / 神経前駆細胞 / インビボイメージング / 移植細胞の生存率 |
研究実績の概要 |
初年度は人工神経内に移植したiPS細胞由来神経前駆細胞の生存は、移植動物の週齢により左右されるのかを検証した。具体的には免疫応答マウスとして雄6週齢のC57BL/6マウス、雄96週齢のC57BL/6マウスそれぞれに長さ5mmの坐骨神経欠損を作成し、発光蛋白が遺伝子導入されたiPS細胞由来神経前駆細胞を付加した人工神経を用いて架橋再建を行った。移植後インビボイメージングを用いて、移植後4,7,14,28日と経時的に観察して移植細胞の生存率を評価した。その結果免疫応答マウスでは若齢マウス、老齢マウス共に、移植後4,7日目にかけて移植細胞の生存率は極大となった後、移植後14日目まで移植細胞由来の発光を確認できた。しかし、移植後28日目では、移植細胞由来の発光はみられなかった。また、生存期間中は若齢マウスの方が、老齢マウスに比して高い生存率を維持していた。 さらに、移植細胞の移植後早期における人工神経内での局在を調べるべく、GFP遺伝子があらかじめノックインされたiPS細胞から、神経前駆細胞塊を分化誘導しiPS細胞由来神経前駆細胞が付加した人工神経を作製し、同様に6週齢のC57BL/6マウスの左坐骨神経に長さ5mmの欠損を作製し、神経前駆細胞付加人工神経で架橋再建を行った。移植後4,7,14日目に移植した人工神経を採取し、免疫染色を行い組織学的に評価した。その結果、移植後7日目では、移植した細胞は抗GFP抗体陽性細胞として人工神経の内壁および内層内に残存していた。これらの細胞は抗GFP抗体および抗S-100抗体が二重陽性となるシュワン様細胞として、遠位側の再生軸索周囲に存在し、一部は再生軸索内にも存在していた。移植14日目では、移植した細胞は人工神経内で末梢側の再生軸索周囲に残存していた。これらは抗S100抗体も陽性であり、シュワン様細胞としての性質を保ち続けていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおり、検討項目である「人工神経内に移植したiPS細胞由来神経前駆細胞の生存は、移植動物の週齢や免疫状態により左右されるのか」のうち、移植動物の週数によって移植した神経前駆細胞の生存期間は左右され、かつ免疫応答動物では、細胞移植(他家移植)では、免疫応答により最終的には移植細胞は移植早期(28日)で排除されること示すことができた。また移植細胞は、人工神経内で、移植動物のとくに遠位断端に集簇して生存していること示すことができた。我々はこれまで、若齢マウスや老齢マウスの坐骨神経欠損を、iPS細胞由来神経前駆細胞を付加した人工神経を用いて架橋することにより、人工神経単独よりも、末梢神経再生が促進されることを報告してきた(Uemura T. BBRC. 2012, Yokoi T. JBMR 2017)が、これらは細胞の移植早期に、細胞から分泌される何らかの神経再生にかかわる液性因子が作用しているためと考察することができ、初年度の目標はおおよそ達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、移植動物の免疫状態によって移植した神経前駆細胞の生存率に影響があるのかについて引き続き検証を続けていきたい。具体的には免疫抑制マウス(NOD-SCID, 6週齢 n=15)および免疫応答マウス(C57BL6, 若齢: 6週齢 n=15)に長さ5mmの坐骨神経欠損を作製し、人工神経を足場として上記のiPS細胞由来神経前駆細胞(1匹あたり400万個)を移植する(以下iPS細胞付加人工神経)。移植後4,8,12,24,48週と経時的に生体内イメージングを用いて移植細胞の生存率を比較し、免疫応答マウスと免疫抑制マウスとの間で移植した神経前駆細胞の生存率の比較を行っていきたい。また、移植細胞より作用する液性因子が何であるのかを探るべく、人工神経内における神経再生促進因子(BDNF,GDNF,VEGF,ATF-3)や、若返り因子発現の差異についてReal time RT-PCR、Western-blotting法を用いて比較検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度(2019年度)の実験にかかった費用は主に、実験動物購入費、またその他の試薬であったが、今年度は免疫応答動物を使用した実験に限定していたため、予定されていた該当年度の所要額を上回ることはなかった。今後は比較的高額な免疫抑制マウス(NOD/SCIDマウス)を用いた実験や、神経再生促進関連因子を検索するためのRT-PCRやWestern Blotting、また作成したPRP中の因子の計測をELISAにより行なっていく予定であり、次年度(2020年度)にはこの実験のための試薬購入費として相当額が必要となる予定であり、これらの購入費用に当てる予定としている。
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