研究課題/領域番号 |
19K12766
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
岡田 容子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 研究技術員 (20793219)
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研究分担者 |
藤原 成芳 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (50365425)
村山 正承 関西医科大学, 附属生命医学研究所, 講師 (60737675)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 再生医療 / 神経細胞移植 / コリン作動性神経 / 認知機能 |
研究実績の概要 |
認知症は脳神経細胞の損傷・欠損により認知機能に障害が生じる。現在の治療方法は症状の改善を目的とした対症療法であり、損傷した神経細胞はそれ自身が再生することがないため根治療法の開発が求められている。 我々は神経細胞移植により認知症モデルマウスの認知機能が改善すること、神経細胞が再生することを見出している。しかし、その再生機構や再生した神経の機能についてまだ不明な点が多く残されている。そこで本研究では、認知症モデルマウスへの神経細胞移植を行い、モリスの水迷路試験にて認知機能の改善状況を評価したうえで神経細胞移植による神経再生機構の解明を試みた。 コリン作動性神経細胞が顕著に減少している認知症モデルマウスへのヒトiPS細胞由来神経幹・前駆細胞の移植を行った。これらはコリン作動性神経に分化することができた。認知機能の改善が認められたマウスの移植後の脳は、海馬コリン神経の起始核である内側中隔とブローカの対角帯垂直部において、ヒト核蛋白陽性とヒト核蛋白陰性の両者のコリン神経細胞の再生を認めた。すなわち、この神経細胞移植は、移植されたヒト神経細胞だけでなく、内因性のマウス由来のコリン神経細胞の再生・分化をもたらすことが示された。さらにこれらはコリン神経はその投射先は現時点では明らかではないが、軸索伸長(投射)していた。 今後は、神経細胞に浸透する蛍光プローブである神経トレーサーを用いて、移植細胞のみならず、再生したマウス由来の内因性のコリン作動性神経ががどのように軸索を伸長させているのか、投射するかを評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経細胞移植後に、認知機能の改善を認めた事は、この研究計画の基盤であるが、この知見の再現性が、複数の実験担当者により確認された。そして内側中隔核とブローカ の対角帯垂直部で移植神経細胞由来のみでなく、マウス由来の内因性のコリン作動性神経が再生・分化していたことは驚きであり、重要な知見を見出したことが示された。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの移植後のマウス脳で、内側中隔核とブローカの対角帯垂直部で移植神経細胞由来のコリン作動性神経のみでなく、マウス由来の内因性のコリン作動性神経が再生・分化していたが、その細胞数はかなりの幅を持っている。 すなわち、ヒトiPS細胞由来のコリン作動性神経が多数を占めるマウス脳とほとんどがマウス由来の内因性のコリン作動性神経であるマウス脳がある。これらの成績からは、神経細胞移植は、移植細胞の分化・生着をもたらすことを示している。そして、おそらくは神経の再生・分化を促進するメカニズムを併せ持っており、内因性のマウスのコリン作動性神経の出現をもたらす。我々は、移植細胞がホストの脳内の血流を改善する可能性に着目しており、この点を免疫組織染色を中心に解析を進める。さらに神経細胞に浸透する蛍光プローブである神経トレーサーを用いて、移植細胞のみならず、再生したマウス由来の内因性のコリン作動性神経ががどのように軸索を伸長させているのか、投射するかを評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では免疫組織染色を主体に解析を行っている。 当該年度は、これまでに使用していた、すでに購入済みのモノクローナル抗体や染色キットを使用することで消耗品費が当初の想定より少額で済んだ。 次年度は、これらの試薬を新規に補充するために消耗品費が当初の想定よりも増える可能性が高く、前年度の繰り越し分と合わせて使用する予定である。
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