研究課題/領域番号 |
19K12767
|
研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
梅沢 栄三 藤田医科大学, 保健学研究科, 准教授 (50318359)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 拡散 / MRI / 機械学習 / グリンパティックシステム / 脳間質液流 |
研究実績の概要 |
グリンパティックシステムを構成する要素の一つに、脳間質液の流れがある。これは脳の老廃物を除去する機能を持っていることが指摘されてる。本研究では、拡散 MRI を機械学習の方法で解析することによって、この流れの性質を解明する。この解析には、入力が拡散 MRI データで出力が脳間質液流の性質を表す種々のパラメータであるような人工ニューラルネットワーク(ANN)を使う。この ANN を訓練するために使う教師データをシミュレーションにより作成する:脳間質液流の性質を表す種々のパラメータ等の値を想定してそのパラメータ値に対応する拡散 MRI 信号を信号模型に基づいて作成する。これで作成した信号値と対応する正解パラメータの組を教師データとし ANN を訓練する。
脳間質液流の性質を表す種々のパラメータの値は未知であるので、その値にいくつかの値を想定して教師データを作って ANN を訓練し、その ANN に実際の脳の拡散 MRI データを入力して、その結果を受けて再度、脳間質液流の性質を表す種々のパラメータの値を調整して ANN を訓練する。ANN がよく訓練されているかどうかの評価には、ANN に実際の脳の拡散 MRI データ入力して得られた結果を再現するような拡散 MRI 信号を見つけてその信号を作るために用いた脳間質液流の性質を表す種々のパラメータ値を真値として ANN からの出力を評価する。
2021年度の研究により、脳間質液流の速さが想定していた値よりも小さいことが示唆された。この速さを拡散係数に換算した場合、体温の場合の水の自由拡散の拡散係数よりも相当小さいものも含まれる可能性が示唆された。ANN を訓練する際の教師データに脳間質液流の速さが遅い場合を加えて訓練することで、ANN の他のパラメータ推定も改善することが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナ感染拡大により当該研究以外の業務が激増したこと、及び、主な実験施設である本学大学病院におけるボランティア撮像実験が困難になったことにより、予定していた拡散 MRI 撮像実験等が実施できなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
【研究実績の概要】で述べた教師あり学習を行う際は、脳間質液流の性質を表すパラメータが未知であることによる上述のような複雑さがある。教師なし学習を利用することでこれを克服できるかもしれない。今後、教師なし学習にベイズ推定を組み込んで ANN によるパラメータ推定を行う方法の利用も検討する。
また、次年度は、本学教育病院で健常ボランテイアを対象に脳間質液流検出のための拡散MRI 撮像実験を行い、2021年度に得られた知見を使って訓練した ANN 等を使って解析する。特に、脳間質液流の方向を検出する実験を行う予定である。この流れには重力が影響している可能性がある。拡散 MRI 実験の対象者の体位を仰向けから横向きに変えることで、脳間質液流の方向が、前後から左右に変わる可能性があると考えており、これを実験的に検証する。また、飲酒時の酒酔い状態で脳間質液流がどのように変化するのかも実験する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染拡大の影響により、研究期間を1年間延長した。次年度使用額はこの延長期間における使用額であり、数値実験や数値解析を行うためのソフトウェアの更新やデータ保存媒体の購入等に使用する。
|