研究課題/領域番号 |
19K12772
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井上 雄介 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (80611079)
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研究分担者 |
早川 正樹 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (30516729)
深谷 碧 東北文化学園大学, 科学技術学部, 助手 (20826060)
山田 昭博 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (40781448)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 機械循環 / 人工心臓 / 流体解析 / VWF / 出血合併症 |
研究実績の概要 |
補助人工心臓を数年間適用すると正しい抗凝固療法下でも出血合併症が生じる。その主因は後天性von Willebrand 症候群(AVWS)と考えられており、血液ポンプの回転駆動よって発生した高せん断によりvon Willebrand因子(VWF)が過剰に切断され、出血に至る。LVAD装着患者は心移植まで補助循環を中止することは不可能であり、血漿充填による対処療法も効果は無い。我々はVWFの切断を抑制し、出血を生じさせない薬剤の開発を進めているが、適切な薬剤濃度などの治療法と評価方法は確立されておらず、臨床ステージに進むにあたって取り組むべき急務の課題となっている。そこで本研究では、血液ポンプの長期使用時の合併症に対する治療法の開発とその作用機序の解明を目的として研究を行っている。外乱を極限まで抑えた評価系を構築し、補助循環装置にヒトの新鮮血を環流させ、AVWSをin vitroで再現する。次に薬剤効果測定と有効な薬剤濃度を同定する。また、その作用機序を解明するために駆動方式の異なる複数の血液ポンプである高回転で血液を加速させる遠心ポンプ等と、体積移動型のローラーポンプ等で比較を行い、VWFへの影響を定量的に評価し、AVWSの主因と薬剤の作用機序の解明を行う。現在遠心ポンプとローラーポンプに対する流体解析を進めており、最も大きなハードルである解析メッシュの作成に成功し、解析した。残りの期間で、両ポンプの比較と、解析条件を臨床の課題にあわせて設定し解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
二つのポンプの異なる形状に対して、どちらも流体解析に必要なメッシュの構築に成功した。また、血液にせん断を附加する実験も順調に実施できておりせん断による血中タンパク質von Willebrand因子(VWF)の変化を捉えることに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は予定通り、動物実験によって評価を行う。ヒトとヤギはVWFが異なるため、互いに干渉せず開発中の薬剤(A10)もヤギVWFにはほとんど効果を示さない。奈良県立医科大学で作製したヒト血液製剤(血漿VWF)をヤギに点滴導入し、ヒトVWF動物モデルを作成する。臨床応用されている機械循環を用いて動物実験を行うためにはヒトと同程度の体格であることが必須の条件であるためラット等では実験不可能である。ヤギに補助人工心臓を適用し、模擬循環回路よりもヒトに近い血行路で実験を実施することで、ヤギの生体内でヒトのVWF変化と薬剤の効果を評価する。VWF破壊阻害薬A10を導入した系ではヒトVWFは破壊されずに、ヤギVWFのみが破壊されると想定している。現在本実験を実施するための動物実験倫理審査とヒトを対象とした倫理審査(ヒト血液を使用するため)を申請しており、実施に当たって準備を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が順調に推移し、消耗品などの消費が抑えられたため。
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