研究課題/領域番号 |
19K12773
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
片山 統裕 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (20282030)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | グリンパティック系 / クリアランス / 脳 / 睡眠 / 麻酔 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度冬からのCOVID-19の影響で実験施設への入室制限など動物実験の実施に大きな制限されたため、実験は限定的なものしか行うことができなかった。そこで、次年度に行う予定だった大脳皮質クリアランス系の数理モデリングとシミュレーション研究の一部を前倒しして実施することにした。 グリンパティック系による大脳皮質のクリアランス現象を、細胞外空間における低分子の拡散、間質液流、血管周囲腔などへの排出などを導入した反応拡散方程式で記述し、3次元有限差分法による数値シミュレーションモデルを構築した。主要なモデルパラメータは、テトラメチルアンモニウム(TMA)イオンを用いたイオン拡散計測法や統合光学イメージング法(IOI)法により大脳皮質の拡散特性を計測した先行研究のデータを用いた。本研究では、IOI法を反復的に行う機能的 IOI 法(fIOI)を用いているため、従来の研究では問題にならなかった蛍光トレーサの細胞外マトリクスへの吸着や細胞外空間の袋小路構造への蓄積の効果も考量する必要がある。この特性を模擬するモデル項のパラメータ値については、他のグループによる実験報告がない。本来はそのパラメータ値を得るための実験を行う必要があるが、ここでは昨年度までに行った予備実験で得られたデータから概算を見積、シミュレーション結果を実験データに合うようにパラメータ値を設定することにより対応した。 脳クリアランス系に関する最近の研究では、細胞外空間における老廃物の輸送が間質液の流れによると考えるバルクフロー説と、間質液流の影響は小さいと考える単純拡散説の間で論争になっている。これらの説を数値シミュレーションにより検討した。その結果、間質液流の影響はわずかであり、単純拡散説を支持する結果が得られた。また、間質液流の効果があったとしても fIOI法で観測可能なレンジを下回ることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では、1セット5日間連続で行うプロトコルの実験を計画していたが、COVID-19の影響で実験室への立ち入りが制限されたため、これまでの実験と同じプロトコルでは実験を行うことができなかった。 出勤の制限が緩和されてから、短期間で実施できるプロトコルに変更を試みたが、想定している水準のデータを取得することができていない。COVID-19による感染状況が改善し元の実験プロトコルで実施できるようになるか、そうならない場合は実験プロトコルの改良が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者が所属機関を異動することになったため、これまでの所属機関で研究を継続できるように申請し、手続きを行う予定である。また、所属する研究者を研究分担者として新たに加え、実験の一部を担当していただくことにした。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19流行のため、実験室がある施設への入室が強く制限された。それに対応するため、実験と装置開発の次年度への延期、実験プロトコルの変更等を行い、かわりに次年度に予定していた(予算額が小さい)モデリング・シミュレーション研究を主に実施した。これにより、執行額が計画金額を下回ることになった。 また、参加を予定していた学会、国際会議がすべてオンライン開催になったため、旅行計画を大幅に変更することになり、旅費が計上していた金額を大幅に下回ることになった。 以上により、次年度使用額が発生することとなった。 次年度から、新たに研究分担者に加わっていただくことになったので、予算を配分する予定である。
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