研究課題/領域番号 |
19K12778
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
田中 茂雄 金沢大学, フロンティア工学系, 教授 (20262602)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 電気的筋刺激 / 骨粗鬆症 |
研究実績の概要 |
電気的筋刺激により骨質を維持・促進させる方法は、身体的能力が劣る高齢者にとっても実行可能で安全な骨粗鬆症の予防法となり得るが、本年度においては、その有効範囲がどの程度であるかを明らかにすることを目的とした。本研究では、麻酔下のラット(Sprague Dawley、雌、8週齢)の左大腿四頭筋に1日30分間、3日間連続で電気刺激を与え、それが全身の骨(左右の大腿骨、脛骨、上腕骨、尺骨、橈骨、および腰椎(L2~L4))の力学的・構造的特性に与える影響について調査を行った。また、効果的な電気的筋刺激波形を検討するため、一般的な周期的パルスと過去に有効性が確認されているランダムパルスの二つを比較した。刺激16日後に上記の骨を摘出し、同日、湿潤状態を保ちながらその力学的特性を評価した。その結果、ランダム電気的筋刺激により腰椎の力学的剛性が変化したが、刺激部位である左大腿骨を除き、他の骨においてはいずれの刺激においても力学的剛性の変化は見られなかった。なお、腰椎への影響は、腰椎の箇所に依存していた。一方で、腰椎の骨密度(BMD)に刺激の影響がなかったことから、刺激が骨コラーゲンの架橋を変化させている可能性が示唆された。以上の結果は、電気的筋刺激が遠隔的に骨強度を向上させる可能性を示すと同時に、その効果の部位依存性が強いことを示している。また、電気的筋刺激の効果は、骨の形成を促進するのではなく、骨の質を変化させているということが腰椎でも確認された。以上の結果は、本法を骨粗鬆症予防法として応用するための基礎的知見を提供するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標は、ランダム電気的筋刺激の遠隔的効果を、刺激箇所から離れた場所の骨の力学的特性変化を調べることで明らかにすることであった。それに対し、左大腿四頭筋への単一箇所刺激が、腰椎までは効果が及ぶもものの、それ以外の骨では刺激効果が現れないことが確認されたことから、今年度の目標は達成されたと言える
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今後の研究の推進方策 |
今後は、1)ランダム電気的筋刺激の遠隔的効果に神経系が関与していることを神経切断の導入により明らかにすること、2)ランダム電気的筋刺激の遠隔的効果における骨強度変化は骨コラーゲン架橋によるものであることを明らかにすることの、二つが年度計画として設定されており、2年目においては1)の目的に対し研究を実施する予定となっていた。しかしながら、ランダム電気的筋刺激が、骨の形成を伴わずその質のみに影響を与えるという仮説は、1年目の実験結果においても支持されたことから、その現実性が大きく高まっている。これは、学術的により価値の高い課題でもあることから、早急に仮説検証を行うことが望ましいと判断し、2)の目的を先行して2年目に実施する。
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