電気的筋刺激により骨質を維持・促進させる方法は、身体的能力が劣る高齢者にとっても実行可能で安全な骨粗鬆症の予防法となり得る。骨粗鬆症モデルとして使用する後肢懸垂ラットにおいては、尾部を吊るすことで後肢への荷重を取り除き、骨の力学的適応により骨粗鬆症状態を作り出すものである。昨年度、我々は動物へのストレスをより低減することができる改良モデル、体幹懸垂モデルを開発した。本年度はこのモデルを用いて、腰椎に対するランダムパルス列波電気刺激による骨粗鬆症抑制効果を検証することを目的した。実験では、ランダムパルス列電気刺激(RdPT)と一般的な周期的パルス列電気刺激(PrPT)を比較しており、両刺激をラットの背部に設置したパット電極より与え、刺激後の腰椎(L1~3)と大腿骨頸部の力学的特性および構造特性の変化をそれぞれ準静的力学試験とμCT解析により調べた。体幹懸垂は8週間行い、電気刺激は1 日30 分,週に3 回与えた。実験群として、実験開始時群(Baseline control)、通常飼育群(Age-matched control)、体幹懸垂のみの群(Sham control)、体幹懸垂と刺激を与えた群(RdPTおよびPrPT)の計5群(各群、n = 6)を設けて比較した。実験の結果は、背部へのRdPT 電気刺激は,体幹懸垂による腰椎の力学的特性の低下を抑制するだけではなく、その効果は刺激位置から離れた大腿骨頸部へも及ぶことを示していた。得られた結果は、骨粗鬆症予防におけるランダム電気刺激の有効性を示しており、同手法は新しい非薬物的骨粗鬆症予防法として応用されることが期待される。
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