研究課題/領域番号 |
19K12780
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
田口 弘康 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 特任教授 (90102912)
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研究分担者 |
柳沢 大治郎 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 准教授 (50581112)
加藤 智子 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 特任助教 (90754367) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / Aβオリゴマー |
研究実績の概要 |
我々はこれまでにクルクミン誘導体Shiga-Yのケト・エノール互変異性にAβオリゴマー結合の鍵が存在することを突き止めた。本研究では、板状のエノール型ではなく、蝶番状のケト型Shiga-YがAβオリゴマーに結合するとの仮説をもとに、Aβオリゴマーの画像化試薬を開発することである。 2019年度は、ケト型しかとれないクルクミン誘導体Shiga-Y51を新規に合成した。次いで、ケト・エノール互変異性を有するShiga-Y5、ケト型しかとれないクルクミン誘導体Shiga-Y17およびShiga-Y51について、Aβ線維およびAβオリゴマーへの結合性を水晶発振子マイクロバランス法(QCM)を用いて評価した。Shiga-Y5はAβ線維とAβオリゴマーの両方に結合性を示し、Aβオリゴマーへの結合量とAβ線維への結合量の比は1.29であった。一方,ケト型しかとれないクルクミン誘導体Shiga-Y17およびShiga-Y51では結合量の比はそれぞれ2.52、2.57であり、ケト型しかとれないクルクミン誘導体のほうがAβオリゴマーに対する選択制が高いことが示唆された。 アルツハイマー病遺伝子改変マウス(APP/PS1マウス)を用いて、Shiga-Y51の血液脳関門通過性を評価した。Shiga-Y51をAPP/PS1マウスの尾静脈から投与し、30分経過後に脳を摘出した。質量分析解析を用いてShiga-Y51の脳内移行量を解析したところ、1,600 ng/mLのShiga-Y51が検出された。この結果から、Shiga-Y51は血液脳関門を通過して脳実質に到達することが示唆された。今後、Shiga-Y51のin vivo脳でのAβオリゴマー結合性について、質量分析顕微鏡解析を用いて解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規に合成したケト型化合物Shiga-Y51が、Aβオリゴマーへの高い選択性を有することを明らかにした。さらに、マウスを用いた実験によって血液脳関門の通過性や毒性に問題がないことが明らかになったことから、次年度以降の遺伝子改変マウスを用いた画像化試験に支障なく進むことができるため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降では、Shiga-Y51のin vivoにおけるAβオリゴマー結合性について、脳内にAβオリゴマーとAβ線維が蓄積するAPP/PS1マウスおよび脳内にAβオリゴマーのみが著増するAPP-Osaka変異マウスを用いた解析を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染症対策のため、年度末に自宅勤務を実施した。その期間に使用する予定分であった金額が使用できずに、次年度使用額として計上された。 今年度は当初計画に従って研究を遂行し、当初予定通りに使用する予定である。
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