研究課題/領域番号 |
19K12782
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
田村 篤敬 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (30394836)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 軽微な脳損傷 / 脳脊髄液減少症 / 脊髄硬膜 / 二軸引張 / コンタクトスポーツ |
研究実績の概要 |
日本国内では,交通事故によって自動車乗車中に頸部を損傷する負傷者は全体の79.5%に及ぶ.その主な症例としては“むち打ち損傷”が広く知られるが,最近では,むち打ち損傷に付随し,所謂“脳脊髄液減少症”が発生するリスクのあることが指摘されている. 脳脊髄液減少症は,中枢神経系である脳脊髄を保護する硬膜が何らかの外力によって破壊され,クモ膜下腔を満たす脳脊髄液が外へ漏れ出すことによって発生するものと予想されている.ところが,そのメカニズムは未解明であり,現状,脳脊髄液減少症に対して確実に有効な治療法も確立されていない.すなわち,脳脊髄液減少症を防ぐための対策を講じるという意味では,依然として多くの課題が残されている状況である.しかし,人体有限要素モデルを活用し,現実の事故を忠実に模擬した衝突解析を実行することができれば,今まで原因不明とされてきた脊髄硬膜の損傷メカニズムを解明する糸口を掴めるのではないかと期待される. そこで本研究では,数値解析に活用できる精確な脊髄硬膜の力学特性を把握することを目的に,試験装置を自作し,脊髄硬膜を試料とする等荷重二軸引張試験を試行的に実現した.その結果,脊髄硬膜は低ひずみ領域で軸方向に軟らかく,周方向に硬い力学特性を有する一方,高ひずみ領域では軸方向と周方向のひずみには有意差が認められず,ヤング率は解剖学的な位置に関して有意差のあること(たとえば, L(腰部)> T1(胸部上位))を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PD制御を活用した等荷重二軸引張試験装置を試作した.その結果,生体材料のクリープを考慮しながらゼロ点を調整することが可能となり,実際にブタ脊髄から摘出した硬膜試料を用いて二軸引張試験を実施することに成功した.目下,直交する二軸に関して,より正確に等荷重を保持できるよう,PD制御からPID制御への拡張をはじめとする試験装置の改良に取り組んでいるところである.
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今後の研究の推進方策 |
PID制御を活用した等荷重二軸引張を実現した後は,脊髄硬膜の軸方向と周方向の荷重を1:1に保持するだけでなく,0.5:1~1:0.5の範囲で試験条件を変更・調整し,本格的な力学実験に着手する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
2019度分と2020年度分を合算して導入したい設備があるため.
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