脳脊髄液漏出症は,中枢神経系である脳脊髄を保護する硬膜が何らかの外力によって破壊され,クモ膜下腔を満たす脳脊髄液がその外部へ漏れ出すことによって発生するものと予想されている.本研究では,数値解析に活用できる脊髄硬膜の基本的な力学特性を把握することを目的として,二軸引張試験装置の開発と力学実験に取り組んできた.その結果,低ひずみ域における脊髄硬膜の力学応答には顕著な異方性(ヤング率:軸方向 < 周方向)が認められ,生理的環境下における硬膜生来の柔らかさは,エラスチンの含有量と相関の高いことを見出した.さらに,高ひずみ域における力学応答にも軸方向と周方向の間には異方性のあることを明らかにした.
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