研究実績の概要 |
脊椎インプラントの使用は、手術部位感染の危険因子の一つであり、抗菌インプラントが注目されている。我々は銀に着目し、ハイドロキシアパタイトと合わせてチタンインプラントに溶射することで、銀の抗菌作用とハイドロキシアパタイトの骨伝導能を併せ持つコーティングを可能にした。この技術を脊椎領域に応用させることを検討し、椎体間ケージに銀-ハイドロキシアパタイト(Ag-HA)をコーティングした。本研究では、銀を脊椎椎体間に留置することによる、骨伝導能への影響と脊髄神経への直接的な毒性について調査することを目的とした。 非コーティング、HAコーティング、Ag-HAコーティングの3種の椎体間ケージを用意し、10週齢のSprague-Dawleyラットに対して腰椎前方固定術を行った。術後8週で屠殺し、マイクロCTおよび病理組織検査で骨伝導能を調査した。また、神経毒性の評価は、術前および術後1,2,4,8週に神経学的検査(toe pinch testおよびinclined plane test)を行った。術後8週の病理組織検査で、HAコーティングおよびAg-HAコーティングを使用した群は非コーティング群と比べ有意にケージ周囲の骨接触率が高かった。骨形成率は3群間に有意差を認めなかった。神経学的検査は、各測定段階で3群間に有意差を認めなかった。 Ag-HAコーティングは、長管骨に比べ骨癒合のための条件が悪いとされている椎体間においても良好な骨伝導能を有しており、かつ銀による直接的な神経毒性も認められないことが判明した。Ag-HAコーティング椎体間ケージは、脊椎椎体間固定術後の感染を低減しうる可能性があり、今後、さらなる研究を行う予定である。
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