2光子蛍光顕微鏡は生体深部を高空間分解に観察するために有効である.しかしながら,観察対象が深部になればなるほど,焦点以外からの信号が影響してしまいコントラストが悪くなってしまう問題が存在する.この問題により観察可能深さが制限されてしまう.本研究では,フェムト秒光パルス列を利用した重なり変調による光音響顕微鏡を開発し,観察可能深さを向上することを目的とした.この目標達成のためにはいくつかの課題が存在した.①2つのフェムト秒光パルス列の時間的,空間的な重なりを正確に調整できるか?②フェムト秒光パルス列の重なり変調による2光子吸収の時間的変化のビジビリティを高くすることができるか?③2光子吸収の時間的変化により光音響波を発生させることができるか?④2光子吸収による光音響波により深さ方向の空間分解能を向上させることができるか?観察可能深さを向上させることができるか? これらの課題を解決するために,本研究において,フェムト秒光パルス列の重なり変調を用いた光音響顕微鏡装置の調整,改良,実験を行ってきた.高速に重なり変調を行うために,高速に屈折率を変化させることが可能なKTN結晶を用いて,装置を構築することに成功した.光学系の改良を行うことにより,重なり変調による2光子吸収の時間変化のビジビリティの向上を示した,また,重なり変調による光音響波の発生を確認し,ファントムを用いて深さ方向の情報が得られることを示した.
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