組織－組織間相互作用の発現機構を解明するためのヒトインビトロ生体システムの構築

2021 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 19K12793
• 研究機関: 福井工業大学
• 研究代表者: 古澤 和也 福井工業大学, 環境情報学部, 教授 (00510017)
• 研究分担者: 大能 俊久 福井工業大学, 環境情報学部, 准教授 (60390902)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2022-03-31
• キーワード: 組織間相互作用 / 組織工学 / 共培養 / コラーゲンゲル / 構造機能相関 / モデル実験系

研究実績の概要

この研究課題では、ゼリー状の素材（ハイドロゲル）を使用してヒト由来の細胞を培養することで肝組織や腸上皮組織のミニチュア組織を構築し、これらを組み合わせることで小さな培養容器の中に異なる組織の間のコミュニケーションを再現した複合再生組織（インビトロ生体システム）を構築することを目的とした研究を進めています。そのために、この研究では、コラーゲンゲルを使用して肝組織のミニチュアを構築します。この時、コラーゲンゲルの微細な構造を変えた時に、ミニチュア肝組織の代謝機能がどのように変わるのかを今年度調査しました。研究により、ミニチュア肝組織にレンコンによく似た管構造を導入すると、アルブミンがより効率的に生成されることがわかりました。また、この再生肝組織はアンモニアの代謝をより活性化することも示唆されました。これらの成果は、本研究の様な組織工学的方法によってより機能的な再生組織を作り出すための方法を提供しており、この分野の発展に貢献することができました。また、本研究の目的の達成における今年度の研究成果の位置づけとして、ヒトインビトロシステムを構成する組織の生化学的機能の制御技術が実現できたことが挙げられます。このことによって、インビトロ生体システムにおける異種組織間の相互作用が構成組織の機能制御によってどのような影響を受けるのか明らかにする研究が可能になりました。
本研究では、肝組織や腸上皮組織のミニチュア組織を構築し、それらを接着して一緒に培養する共培養技術を確立しました。その結果、腸上皮組織で発現される酵素（CYP3A4）の生成が、ミニチュア肝組織の共培養によって促進されることがわかりました。今後、異種組織の共培養によって現れる各組織の機能変化が、それぞれの組織の機能制御によってどう変わるのかを解明し、このことにより生体内環境を近いインビトロ生体システムを作るための研究を遂行します。

研究成果

• [雑誌論文] Development of Living “Bio-Robots” for Autonomous Actuations (2022)
  • 著者名/発表者名: Furusawa Kazuya、Teramae Ryo、Ohashi Hirono、Shimizu Masahiro、Department of Applied Chemistry and Food Science, Fukui University of Technology 3-6-1 Gakuen, Fukui, Fukui 910-8505, Japan、Department of System Innovation, Osaka University 1-2 Machikaneyama-cho, Toyonaka, Osaka 560-0043, Japan
  • 雑誌名: Journal of Robotics and Mechatronics 巻: 34 ページ: 279～284
  • DOI: 10.20965/jrm.2022.p0279
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Polyanion-induced, microfluidic engineering of fragmented collagen microfibers for reconstituting extracellular environments of 3D hepatocyte culture (2021)
  • 著者名/発表者名: Utoh Rie、Enomoto Sakiko、Yamada Masumi、Yamanaka Keigo、Yajima Yuya、Furusawa Kazuya、Seki Minoru
  • 雑誌名: Materials Science and Engineering: C 巻: 129 ページ: 112417～112417
  • DOI: 10.1016/j.msec.2021.112417
  • 査読あり
• [雑誌論文] Formation of Multi-Channel Collagen Gels Investigated Using Particle Tracking Microrheology (2021)
  • 著者名/発表者名: Yonemoto Junta、Maki Yasuyuki、Koh Isabel、Furusawa Kazuya、Annaka Masahiko
  • 雑誌名: Biomacromolecules 巻: 22 ページ: 3819～3826
  • DOI: 10.1021/acs.biomac.1c00666
  • 査読あり
• [学会発表] コラーゲンゲルの構造が再生肝組織の機能に及ぼす影響 (2021)
  • 著者名/発表者名: 古澤和也 新谷燿也 大能俊久
  • 学会等名: 第31回日本MRS年次大会
• [学会発表] コラーゲン水溶液のゲル化と相分離の共役 (2021)
  • 著者名/発表者名: 古澤和也
  • 学会等名: 第69回レオロジー討論会
• [学会発表] 食肉の階層構造を再現した培養肉製造技術の開発 (2021)
  • 著者名/発表者名: 古澤和也 木村恒久 西嶋茂宏
  • 学会等名: 日本食品科学工学会 第68回大会
• [学会発表] 粒子追跡法を用いた多管構造コラーゲンゲル形成のレオロジー (2021)
  • 著者名/発表者名: 槇靖幸 米本純太 安中雅彦 古澤和也
  • 学会等名: 第44回日本バイオレオロジー学会年会
• [学会発表] 多管構造を持つコラーゲンゲルを使ったヒト大脳オルガノイドの構築 (2021)
  • 著者名/発表者名: 古澤和也
  • 学会等名: 第44回日本バイオレオロジー学会年会