ショウジョウバエに対する交流電界処理が、クリプトクロム遺伝子を通じて、睡眠の改善および生存期間の延長を起こす現象について研究成果をまとめ、学術誌(Scientific reports)に投稿し、2つのリバイス実験を行った。クリプトクロム変異ショウジョウバエは交流電界処理を受けても、睡眠も寿命も変化しない。そこで、Gal4-UASシステムを用いて、クリプトクロム変異ショウジョウバエにクリプトクロム遺伝子のプロモーターおよびコーディング領域を導入し、クリプトクロムの発現時期および発現領域を再現したところ(レスキュー実験)、野生型と同じく睡眠が改善し、生存期間の延長が確認されたため、電界処理による健康増進は間違いなくクリプトクロムによるものだと証明された。また、バックグラウンドの影響が疑われた為、クリプトクロム変異ショウジョウバエを野生型ショウジョウバエとの戻し交配を7世代繰り返したものを用意し、同様の電界処理を行ったところ、これまでの結果と同様に、健康増進効果が見られなくなった。これらの事実から、電場を受容する健康増進効果にクリプトクロム遺伝子の存在は不可欠だと考えられた。 また、青色光の受容体である時計因子として知られるクリプトクロム蛋白が、磁場の受容体としての役割を担うとの報告が、近年は増えている。電場受容体としての機能がどれほど異なるのかは現在のところ不明だが、今後、概日リズムと健康増進の分子機構をさらに研究したい。
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