研究課題/領域番号 |
19K12796
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研究機関 | 公益財団法人鉄道総合技術研究所 |
研究代表者 |
池畑 政輝 公益財団法人鉄道総合技術研究所, 人間科学研究部, 上席研究員GL (40426143)
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研究分担者 |
鈴木 敬久 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (30336515)
立松 芳典 福井大学, 遠赤外領域開発研究センター, 教授 (50261756)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | THz波 / 生体電磁環境 / 電波の生体作用 / 遺伝子変異 / 熱作用 / ばくろ評価 / 開放型導波路 |
研究実績の概要 |
本研究は、THz電磁波の生体への作用を明らかにすることを目的とする。 これまでの研究では、水にTHz帯電磁波をばく露すると熱損失を生じるため、この熱的な作用を主として研究が進められてきた。しかしながら、THz電磁波の生体および生体物質とのカップリング或いは何らかの作用を検討する上では、ごく短時間パルスで高波高値のばく露を行い,非熱的に高エネルギーを付与する条件での作用の有無を検索することも必要である。 そのため、福井大が開発した高強度のTHz電磁波発生システムを用い、作用を細胞の活性や遺伝子の変異という生物学的に保存される指標で検討し、THz帯電磁波の生体への作用を明らかにすることを目的とした。 今年度は、研究初年度として、ジャイロトロンから発振した高強度THz電磁波を微生物にばく露するため、3枚の金属製ミラーを組み合わせてシャーレに固定した微生物(大腸菌E. coli WP2 uvrA)に上方から垂直にばく露する開放導波路を構築した。ばく露のプロファイルは、寒天ファントムを用いてばく露中のばく露面をサーモカメラで撮影することにより、温度変化する領域として解析した。解析したプロファイルに基づき、0.16THz、1.2kWのTHz電磁波を、300回シャーレに固定化した大腸菌にばく露する実験を行った。パルス幅の条件は、ばく露ごとに5~10msec/secの間で1msec/sec毎に変更した。実験後、ばく露したシャーレを37℃で培養し、生死の閾値や突然変異の出現頻度の変化等を検討した。 これまでの結果では、THz電磁波ばく露により、寒天表面の温度が上昇し、およそ60℃前後まで上昇する領域が生死の閾値であった。また、トリプトファン合成遺伝子を指標とした遺伝子の突然変異頻度は、大腸菌の生死の閾値付近の温度上昇においても顕著な増加などの変化は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、THz電磁波の微生物へのばく露装置およびばく露評価を実施するとともに、具体的な微生物のばく露実験に着手しており、概ね研究計画通りに進捗しているため。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に整備したばく露環境で、細菌の活性および遺伝子に与える作用の探索を進める。この実験には遺伝子変異を検出することが可能である、Escherichia coli WP2uvrAおよび類似した数種の菌株を用いて、主として点突然変異への非熱的短時間高エネルギーばく露~熱的高エネルギーばく露までのばく露条件について探索を行う。 なお、東京と福井に位置する研究機関の共同研究であり、共同実験を行う回数、期間が限られるため、予備試験を拡充するとともに、共同実験の際に効率的なオペレーションができるように実験用の治具等を新たに準備する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に見積もりを行なっていた設備費の金額よりも実際の調達額が低くなったため、 次年度使用額が生じた。2019年度に生じた次年度使用額に関しては本課題に必要な消耗品費 として使用する。
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