研究課題/領域番号 |
19K12800
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
和久 友則 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 助教 (30548699)
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研究分担者 |
小堀 哲生 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 教授 (00397605)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ドラッグデリバリーシステム / 超分子ポリマー / ペプチド / ナノファイバー |
研究実績の概要 |
βシートペプチドナノファイバーはモノマーペプチドが一次元方向に集合化することによって形成する超分子ポリマーであり、核形成過程と生長過程を経て形成する。核となる線維断片(シード)を外部添加した際には核形成過程を経ることなく、シード末端を起点として線維が伸長することが知られている。本研究ではこのような特徴を利用して電場応答性ナノファイバーを開発することを目指しているが、初年度はその予備検討としてマルチブロック型構造を有するナノファイバーの作製とその構造解析について検討した。共通のβシート配列をもつ二種類のペプチド(トリグルタミン酸をC末端側にもつE3ペプチドおよびトリリジンをC末端側にもつK3ペプチド)を、それぞれシードとモノマーに選択した。まずE3ペプチドの水溶液を加熱することによりナノファイバーを作製し、この分散液に超音波照射することによりシード分散液を調製した。次に、E3シード分散液にK3モノマー溶液を添加した時の線維伸長過程をチオフラビンT (ThT) 結合アッセイにより評価した。シード存在下では、非存在下と比較して、測定開始直後から蛍光強度の顕著な増加が確認された。また、測定後のサンプルを透過型電子顕微鏡 (TEM) 観察すると、E3シードよりも線維長が増加していることから、E3シードの末端を起点としてK3から成る線維が伸長していることが示唆された。次に、E3シード部位と伸長したK3部位を識別するために、NHS修飾酸化鉄ナノ粒子による標識を行った。TEM観察より、NFsの両末端付近にナノ粒子が主に結合していることが確認された。この結果より、E3シードの両末端を起点としてK3ペプチドから成る線維が伸長していることが示唆された。以上より、シードを起点とする線維伸長によりABA型トリブロック型のナノファイバーを作製できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シードを起点とする線維伸長によりABA型トリブロック型のナノファイバーを作製できることを明らかにした。ABC型ブロックナノファイバーの作製に関しては、最適なペプチドの選択ができておらず未達成ではあるものの、それ以外については当初の計画通りに進展していることから、『おおむね進んでいる』と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
プラスに帯電したドメインとマイナスに帯電したドメインをそれぞれ末端に有するマルチブロックナノファイバーを作製する。作製したナノファイバーを蛍光標識し、その電場応答挙動(配向と泳動速度)を共焦点レーザー顕微鏡観察により評価する。それぞれのドメイン長、組成、ナノファイバー全体の長さが電場応答挙動にどのように影響するかを解析し、構造を最適化する。次に、細胞存在下での電場応答挙動を観察し、細胞膜透過性について評価する。ビルディングブロックの親疎水性バランス制御により、優れた細胞膜透過性を示すナノニードルの構造を最適化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、マルチブロック構造をもつナノファイバーを作製するにあたり、シードとモノマーの適切な組み合わせを探すために、網羅的な検討が必要であると考えており、それに関わる合成試薬関連消耗品費を計上していた。しかし予想よりも早い段階で適切な組み合わせが見つかったために計画よりも少ない支出となった。今年度使用予定であった当該予算を次年度に使用する予定である。繰り越し分は主に細胞培養関連消耗品などに充てる。
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