研究課題
石灰化軟骨中に骨形成の優れた足場となる物質が存在するという作業仮説に基づき、石灰化軟骨を多く含む豚大腿骨成長板から、複数の処理により粗抽出画分を得た。この粗抽出画分を培養容器表面にコートし、骨形成試験を実施した結果、骨形成を優位に促進することを発見した。そこで、粗抽出画分を遠心分離により、分画しin vitro骨形成アッセイにおける骨形成促進活性を指標に有効分画を選定した。さらに、ゲル濾過クロマトグラフィーを用いた分画を行い、得られたフラクションをin vitro骨形成アッセイで評価した。その結果複数の骨形成促進画分を得た。それら画分中に含まれるタンパク質分子を電気泳動、銀染色により分離し、マススペクトロメトリーによる質量分析により候補分子を同定した。マススペクトロメトリーによる質量分析については、神戸大学、波多野直哉先生の協力のもと実施した。その結果、4つの候補分子を同定し、それら候補分子のGST融合タンパク質を作成するための発現ベクターの構築を完了している。また、石灰化軟骨の特徴的な形状に着想した、表面パターンの開発に関しては、PDMSをモデル材料とし、メカノバイオロジー研究に基づく生体材料の設計が、ご専門の東京都立大学のシステムデザイン学部、機械システム工学科、三好 洋美先生の協力のもと試作品のデザインを完成し、サンプルの作製を進めている。フォトリソグラフィーで作製した鋳型を用いたPDMSの成形において、現状、離型工程での課題があり表面パターンの形成は検討段階ではあるが、作成したPDMSモデル材料上で、骨芽細胞を培養し、動態解析が可能であることは確認できた。
2: おおむね順調に進展している
灰化軟骨を多く含む豚大腿骨成長板から、石灰化促進効果が期待される4つの候補分子を同定し、それら候補分子のGST融合タンパク質を作成するための発現ベクターの構築を完了した。表面パターンの開発に関しては、フォトリソグラフィーで作成した鋳型を用いたPDMSの作製において、数十マイクロメータ単位の微細な構造であるため、現状、離型工程での課題があり表面パターンの形成がまだ検討段階にあるが、この問題を解決するため、フォトリソグラフィーによる微細加工形成が専門の東京都立産業技術研究センター電気技術グループの小宮 一毅先生と新たに研究協力体制を構築し、パターン形成条件や、レジスト材料の検討等をおこなっている。
初年度に確立したGFP安定発現MC3T3-E1細胞を用いた細胞動態解析系とin vitroでの骨形成試験を用いて、昨年度石灰化軟骨の抽出成分から同定した4候補分子が骨形成および細胞動態に及ぼす効果を検証する。また、PDMSを用いた微細加工の条件検討により、石灰化軟骨を模した表面パターンを形成し、候補分子によるコート剤と表面形態の組み合わせによる骨形成促進法の開発を目指す。PDMSを用いた微細加工の条件検討については、東京都立大学の三好 洋美先生、都立産業技術研究センターの小宮 一毅先生の協力のもと実験を進める。さらに、破骨細胞による骨吸収によって形成される吸収窩および、その構成成分が骨芽細胞による骨形成に及ぼす効果についても同様に解析する。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Scientific reports
巻: 11 ページ: -
10.1038/s41598-021-85499-6