昨年度、石灰化軟骨中に骨形成の優れた足場となる物質が存在するという作業仮説に基づき、石灰化軟骨を多く含む豚大腿骨成長板から、同定した骨形成促進能を有する可能性のある4つの候補分子について、GST融合タンパク質を作成するための発現ベクターを構築し、大腸菌を用いて、蛋白精製条件の検討を実施した。諸条件を最適化し、得られたGST融合タンパク質を用いて培養容器表面をコートし、骨形成試験を実施した結果、4候補分子のいずれも骨形成を有意に促進することが分かった。次に、4候補分子が骨芽細胞分化へ及ぼす効果を検証するため、候補分子でコートした培養容器上で、骨芽細胞前駆細胞を培養し、分化誘導後の初期分化マーカーとして知られている、アルカリフォスファターゼの活性染色により検討した。その結果、2つの候補分子について骨芽細胞分化を促進することが分かった。さらに、1つの候補分子の細胞内シグナル伝達について、同条件で解析を行った結果、p38MAPKおよびJNKのリン酸化を亢進させることが分かった。また、石灰化軟骨の特徴的な形状に着想した、表面パターンの開発に関しては、都立産業技術研究センターの電気技術グループの協力によりSU-8を基盤材料として、鋳型を作成し、PDMSによるテストパターンの作成に成功した。12種のパターンを配置したテストチップにおいて、骨形成試験および細胞動態のライブセルイメージングによる解析を実施した結果、特定のパターンにおいて骨形成が促進すること、細胞の移動速度に変化が生じることが分かった。
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