研究課題/領域番号 |
19K12808
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研究機関 | 横浜薬科大学 |
研究代表者 |
弓田 長彦 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (40191481)
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研究分担者 |
岩瀬 由未子 横浜薬科大学, 薬学部, 准教授 (00521882)
梅村 晋一郎 東北大学, 医工学研究科, 学術研究員 (20402787)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超音波 / ナノ微粒子 / アポトーシス / 一重項酸素 / ポルフィリン化合物 / 集束型超音波照射装置 |
研究実績の概要 |
がんの治療は、外科手術、放射線治療、化学療法により行なわれてきたが、いずれも腫瘍選択性の観点において理想的と言えるものではなく、これらを腫瘍選択性に優れる新療法の実現が望まれている。現理想的な癌の治療法としては(1)生体への損傷が少ないこと.(2)選択性に優れること.の2条件が要求される. 上記薬物の薬物単独による毒性は、従来の抗癌剤に比べて無視できるほど小さく、また、超音波の集束性により超音波焦域外における音響化学効果発生を原理的にさらに小さく抑えることができるので、超音波を集束した患部以外における副作用が実質的に無視できる治療の実現を期待することができる。目的に、遠隔作用力を持つ外部エネルギーである超音波と音響化学的に抗腫瘍活性化する機能性カーボンナノチューブを組み合わせた新たな腫瘍ターゲティングシステムの開発を行うことを目的とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、超音波単独、または機能性カーボンナノチューブとの併用による単離腫瘍細胞に対する殺細胞作用をトリパンブルー排除法によって確認した。超音波と併用することにより殺細胞効果が発現、または増強されるナノ粒子をスクリーニングした結果、水酸化カーボンナノチューブで優れた増強効果を認めた。超音波の作用には物理作用と、キャビテ-ションを介して発生する活性酸素種による化学作用とがあると推定されるため、活性酸素種消去剤添加の超音波と水酸化カーボンナノチューブ併用による殺細胞作用に対する影響を検討した。OHラジカルの消去剤であるマンニトールとスパーオキサイドラジカルの消去剤であるSODは併用による殺細胞効果に対し有意な抑制作用を示さなかったのに対し、一重項酸素の消去剤であるヒスチジンの添加が、超音波とカーボンナノチューブ、または水酸化カーボンナノチューブ併用処置の殺細胞効果を著しく抑制することを認めた。以上の所見より超音波と水酸化カーボンナノチューブ併用による殺細胞作用機序において一重項酸素の関与を確認した。超音波音波による水酸化カーボンナノチューブ増感作用のメカニズムとして以下に示す過程を考案した.殺細胞作用発現の過程を,その順を追って並べると,超音波の負圧による微小な気泡(キャビテ-ション気泡)の生成→超音波の正圧による気泡の圧壊→気泡内の気体の断熱的圧縮→数千℃に相当するエネルギ-の発生→水酸化カーボンナノチューブの励起→水酸化カーボンナノチューブから基底状態の酸素へのエネルギ-の受け渡し→一重項酸素の産生→一重項酸素による細胞膜の破壊,及び細胞内器官の損傷となる.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、固形がんの治療と超音波照射による水溶液中での活性酸素生成を電子スピン共鳴(ESR)による測定を行う。活性酸素に特異的なスピントラップ剤による生成量の測定と消去剤による阻害効果により一重項酸素の関与を推定する。音響化学療法に適した薬物,すなわち,超音波照射によって活性化され,そのときに生ずる作用が悪性腫瘍の治療に有効な薬物としては,上に述べた水酸化カーボンナノチューブだけでなく,多くの種類の薬物が可能性を持っていると考えられる.今後は,超音波照射による化学的活性化のしくみを明らかにしながら,このような薬物の探索をさらに拡げ,音響化学療法の適用可能性を拡大していくことが必要となろう.以上、本研究の達成度は、当初予定した検討項目において目標値をほぼ達成し、難治性がんであるすい臓がんなどへの医療応用が期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、超音波単独、または機能性カーボンナノチューブとの併用による単離腫瘍細胞に対する殺細胞作用の増強を確認した。さらに、活性酸素種消去剤添加の超音波と機能性カーボンナノチューブ併用による殺細胞作用に対する影響を検討したところ、一重項酸素の消去剤であるヒスチジンの添加が、超音波と水酸化カーボンナノチューブ併用処置の殺細胞効果を著しく抑制することを認め、その殺細胞作用機序においける一重項酸素の関与を推定した。
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