研究課題
研究実績の概要腱・骨・軟骨のような乏血流組織が露出する創は難治であり四肢の広範囲外傷・熱傷の他、糖尿病性潰瘍や虚血性潰瘍に生じることが多い。PATは血流豊富な血管網を有する粗性結合組織であり、大腿部や下腹部の筋膜上に存在する。従来の手術治療では難治であった腱・骨露出創に対し、早期に治癒させることが可能である。ドナー採取量の限界や糖尿病のような創治癒遅延患者のドナー治癒遅延の問題がある。また、採取量に限界があり適応疾患も限定される。したがって本研究の学術的問いは、『ドナーを必要せず、豊富な移植材料が得られる人工PATを作製できないか?』である。今年度の研究3年間の研究結果により以下のことが解明された。ヒト・ウサギのPAT内には血管前駆細胞に発現するCD34陽性細胞が豊富に存在し、ウサギPAT内には骨髄よりもCD34陽性細胞が多いことがわかった。また、ヒト・ウサギのPATの分子質量解析ではデコリンなどの共通のプロテオグリカンが豊富に存在することや、その他分子は50~70%が共通であることが解明された。ウサギのPATを虚血組織である軟骨組織上に移植すると、対象や人工真皮よりも軟骨上に血管を誘導した。今年度は以上の結果を英語論文として作成し、英文journalに投稿中である。今後は共通のプロテオグリカンを創傷に播種して、プロテオグリカンが創傷に及ぼす影響を検証するとともに、人工PAT組織の解明を行う予定である。また、サイトカインの解析を行い、さらにそのサイトカインを創傷に播種することで創傷に及ぼす影響を検証する。将来的に、これらCD34陽性細胞・細胞外マトリックス・サイトカインを含んだ人工PATを作成予定である。
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