研究課題/領域番号 |
19K12810
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
平野 義明 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (80247874)
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研究分担者 |
大槻 周平 大阪医科大学, 医学部, 講師 (20589840)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 組織工学 / 細胞集合体 / 細胞集合体誘導ペプチド / 足場材料 / ペプチドハイドロゲル / VEGF / 軟骨 / 半月板再生医療 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究計画書に基づいて下記の2項目について、研究を遂行した。 1)細胞集合体誘導ペプチドの新機能探索:この周期性ペプチド(Lys-Pro)12は標的分子特異的阻害物質のスクリーニングにおいて、血管内皮細胞増殖因子レセプター(VEGFR)に特異的に結合することが明らかとなった。VEGFRへの特異的な結合は、3次元組織形成時に必要な血管組織を誘導する際に、重要な役割を担うものと考えられる。これらの作用機序を解明することが3次元組織やオルガノイド様組織形成に役立つものと考える。そこで、基礎的知見を得るために、細胞集合体誘導ペプチドと血管内皮細胞(HUVEC)との相互作用について表面プラズモン共鳴等でペプチド-レセプター相互作用を解析した。HUVECとペプチド固定化表面での挙動を解析した結果、弱いながらもHUVECとの相互作用が認められた。ただし、結合定数は極めて小さいものと推定された。 2)細胞集合体埋入ペプチドハイドロゲルの機能解析:ペプチドハイドロゲルと細胞集合体との融合条件の検討および3次元組織形について検討を加えた。軟骨・骨芽細胞や肝細胞などが、細胞集合体形成により機能が増強されることはこれまでの研究で明らかにした。しかしながら、ペプチドハイドロゲルに充填する際には、細胞集合体の密度や細胞集合体同士の接触・相互作用について解析されていない。そこで、融合条件の検討を行い、組織学的解析により条件検討をおこなった。その結果、ハイドロゲル内で細胞集合体を維持することは可能であるが、ゲルの力学的強度や細胞集合体のサイズなど培養条件について詳細に検討をする必要が明らかになった。次年度の課題として、取り扱う必要があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目標である2つの課題について、 1)細胞集合体誘導ペプチドの新機能探索については、HUVECとペプチド固定化表面での挙動を解析した結果、弱いながらもHUVECとの相互作用が認められたこと。 2)細胞集合体埋入ペプチドハイドロゲルの機能解析:ペプチドハイドロゲルと細胞集合体との融合条件の検討および3次元組織形成の検討については、ハイドロゲル内で細胞集合体を維持することは可能であることが明らかになった。当初研究計画にそって研究が遂行できた。結果的には、ゲルの力学的強度や細胞集合体のサイズなど培養条件について詳細に検討をする必要が明らかになったこと。 上記の通り目標が達成され、同時に次年度への課題も明らかになった。よって、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1. ペプチドハイドロゲルと細胞集合体との融合条件の検討および3次元組織形成の検討:軟骨・骨芽細胞や肝細胞などが、細胞集合体形成により機能が増強されることはこれまでの研究で明らかにした。しかしながら、ペプチドハイドロゲルに充填する際には、細胞集合体の密度や細胞集合体同士の接触・相互作用について解析されていない。そこで、融合条件の検討を昨年の課題とともに行い、組織学的解析により条件検討をおこなう。 その後半月板組織再生に向けた条件検討をin vitroで詳細に行う。 2. ペプチドハイドロゲルと細胞集合体との融合によるオルガノイド様組織形成の検討:肝細胞(HepG2, HepRG)と血管内皮細胞(HUVEC)やヒト間葉系肝細胞(hMSC)とHUVECを用いた共培養システム化において、細胞集合体誘導ペプチドの効果を検証する。オルガノイド様組織には、血管の組織の導入が不可欠であるため2種類の細胞を共培養し検討する。また、細胞集合体誘導ペプチドにVEGFRとの相互作用が確認できたため、本ペプチドの効果が大いに期待でき、その有用性を検討する。 3. 細胞集合体埋入ペプチドハイドロゲルの半月板再生評価:まず、ペプチドハイドロゲルが半月板再生に有効かどうかについてウサギの半月板・軟骨損傷モデルに埋入して検証する。また、半月板再生用足場としての機械特性についても合わせて検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 令和2年度下半期から、予定を少し早めてin vivo実験の基礎検討を共同研究先と実施する予定である。そのため次年度へ予算の一部を繰り越すこととした。また、ペプチドハイドロゲル用βーヘアピンペプチドの合成手法の確立が予定より早く達成できたため、保護アミノ酸やHPLC精製用溶媒の使用量を節約できた。 (使用計画) 次年度以降、当初の計画に加えてin vivo実験用の試薬・器具等の購入に充足する。また、in vivo実験実施にあたって大量に必要となるペプチドハイドロゲルの合成用試薬と細胞集合体誘導ペプチドの精製用試薬の購入に充てる。
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