2019年度はCOPD患者40例についてブレスマスを用いた呼気ガス分析を施行した。ブレスマスを使用した低分子量の解析では、質量数50付近、60付近の有機化合物の信号強度と閉塞性換気障害の程度、気腫性病変の程度の間に有意な逆相関、相関をそれぞれ認めた。また、COPD増悪群と非増悪群の間で質量数30前半の化合物の信号強度に有意差を認めた。GC-MSを用いた高分子量の解析では呼吸機能健常者とCOPD患者との間でアルカン系の有機化合物などの信号強度に有意差を認めた。次に、呼気ガス分析で得られた結果と各臨床項目(自覚症状スコア、喘息合併の有無、呼吸機能検査、胸部CT所見、増悪の有無)との比較検討のため、並行してCOPD単独患者50例と喘息要素をもつCOPD患者29例を対象に症状、呼吸機能、画像所見、増悪頻度について2年間追跡した。喘息要素をもつ群は、エントリー時の重症度が高く、増悪頻度が高かった。CAT、呼吸機能検査は両群とも有意な変化は認めなかったが、気腫性病変は両群ともに増加した。末梢血管面積はCOPD群で増加、喘息要素をもつ群で低下した。気道壁厚の割合はCOPD群のみで増加し、喘息要素をもつ群では有意な変化を認めなかった。以上より、気腫性病変、気道壁厚、末梢血管面積は一律に変化せず、喘息要素をもつCOPD患者はCOPD単独群とは異なる構造的変化を示す可能性があると考えられた。この研究結果は本研究を実施し考察する上で参考となる結果と考えている。
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