研究課題/領域番号 |
19K12818
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
武村 哲浩 金沢大学, 保健学系, 教授 (70313674)
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研究分担者 |
林 直樹 藤田医科大学, 保健学研究科, 准教授 (00549884)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 変形画像照合 / ゲル線量計 / 放射線治療 / 線量合算 / 骨等価 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,放射線治療における変形画像照合技術を用いた線量合算の精度評価手法を確立することである. 放射線治療分野ではCT画像を用いて放射線のあて方(放射線治療計画)が決められ,体内線量分布が計算される. また副作用を抑えるため, 治療期間の途中で再度CT画像を撮影し初めと異なる放射線治療計画がたてられる. これら撮影時期, 体位もしくは体型の異なるCT画像で作成された複数の体内線量分布から合計の線量分布を求めるため変形画像照合が用いられる. 変形画像照合技術による放射線治療の線量合算精度の評価手法の確立に向けて, 現在ゼリー状で変形可能なゲル線量計を用いて研究を進めている. ゲル線量計はゼリー状で線量に伴って変色したりポリマー化する特性を用いた線量計である. そのため, 合算線量の精度測定に有用な線量計である. また一般的なゲル線量計は放射線に対して水等価な線量計である. 2019年度は,主に骨等価な線量計の開発を目指した. 変形画像照合を行うためには対象物が変形できなくてはならず, かつ画像上適度に構造物を表すコントラストが必要である. また線量合算は放射線治療での患者への線量を評価するため, 人体構成物と同等なものが望ましい. また線量を図る必要があるため, 高密度物質と等価な線量計である必要がある. そこでゲル線量計を改良して骨等価なゲル線量計を開発することとした. 今年度の成果としては, 骨等価ゲルの開発が進み, 骨等価とするための添加物質とその濃度の決定ができた. その結果では, 骨等価とするためのリン酸水素二水和物を用いた場合, 高エネルギーX線に対して, 人体の一部の骨と等価な吸収となることが明らかになった. また, リン酸水素二水和物を用いたポリマーゲル線量計を作成する手順を確立できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
変形画像照合技術による放射線治療の線量合算精度の評価手法の確立に向けて計画している実施項目は, 骨等価ゲル線量計の開発, ゲル線量計の酸素による感度消失に対する対策, 合算線量評価のためのゲル容器の開発, 最終的に合算線量精度の評価確立を想定している. そのうちの1つに目処がついた事となる. また酸素による感度消失に対する対策も並行して行っており, いくつかの薬品溶液を用いて検討して2020年度には目処がつく予定である. 残りの合算線量評価のためのゲル容器の開発, 最終的に合算線量精度の評価確立, 他の2項目が確立できないことには始められず, 骨等価ゲル線量計と酸素対策が確立できた後に同時に行うことになるため, 最終年度での実施を見込んでいる. 現時点では課題の研究は順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
計画している実施項目は, 骨等価ゲル開発, ゲル線量計の酸素による感度消失に対する対策, 合算線量評価のためのゲル容器の確立, 合算線量精度の評価方法の確立を想定している. 2020年度はゲル線量計の酸素による感度消失に対する対策をメインに行う. 骨等価ゲル線量計はその実用性を明らかにしつつも, 画像上コントラストを作るためにも通常のゲル線量計も必要となり, それぞれが部分的に混在したゲル線量計を作成する必要がある.混在させる上で酸素への対策が十分なされていないと部分的に線量が測れない, もしくは正確な測定ができないことになる. そのため, 酸素への対策が次に重要になる. これらは並行して行ってきているが, 今年度に確立した方法とする. また骨等価ゲル線量計と通常のゲル線量計を混在させて作成する方法も検討する必要がある. ゲル線量計は作成後の時間とともに外気に触れているところもしくは酸素が透過する容器から酸素が浸透しその部分の感度が悪くなる. ゲル線量計は冷却しゲル化させるため, その間,混在させることができない. 骨等価ゲル線量計と通常のゲル線量計の作成時間が異なると上記のように先に作成したゲル線量計の感度が落ちることになる. そのため, 十分に実用的な骨等価ゲル線量計と水等価ゲル線量計の混在ゲル線量計を作成する方法を検討する. また,骨等価ゲル線量計を併用した合算線量評価の容器や評価法の確立についても順次始めていく. 酸素対策により影響する項目はあるが, それ以外の部分で検討を始める.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初申請した補助金により購入予定であった酸素濃度計の購入を, 実際の補助金額が減額されたため購入を諦め, その代わりより安価なものを検討し購入したことが差額が出た大きな理由である. また, 当初計画していたゲル線量計容器は, 初期検討時点では他の既存容器で可能であることから, 当該年度以降分として請求する助成金と合わせて, 今後容器の検討の際に使用する予定である. また, ゲル線量計の酸素による感度消失に対する対策に必要となる消耗品の購入及び学会参加旅費として使用する予定である.
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