研究課題/領域番号 |
19K12822
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西村 隆宏 大阪大学, 工学研究科, 助教 (10722829)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光線力学治療 / PDT / 治療計画 |
研究実績の概要 |
本研究は,生体組織内の光パワー密度分布,光感受性薬剤分布,光褪色プロセスを考慮した一重項酸素生成モデルの構築し,確度の高い 組織内照射光線力学治療(iPDT)における治療計画手法を確立し,iPDT治療計画法の臨床適用に向けた有効性を明らかにすることを最終目標としている. 本年度は,悪性脳腫瘍に対するALA-iPDTを対象とし,PDT治療効果シミュレータを実装し,光照射条件の術前評価に向けた検証を行なった.MRIデータから構築した三次元脳モデルに対するPDT治療効果を算出するソフトウェアを構築した.一重項酸素により生じる腫瘍組織の壊死領域を治療領域と定義し,その体積を治療効果の指標とした.まず,専門医がMRIデータ上の悪性脳腫瘍領域を特定し,特定した腫瘍組織領域および正常組織領域へ光学特性値を割り当てた数値組織モデルを作成し,一本の拡散光ファイバーを刺入して光照射した場合の一重項酸素発生量を計算し,細胞死を誘導する一重項酸素発生量の閾値を設定して治療領域体積を求めた.光照射条件の基本となる刺入位置条件を比較するために,腫瘍中心部へ刺入した場合,腫瘍周縁部へ刺入した場合などの治療体積を比較した.治療体積を指標として光照射条件を評価できることを確認した.刺入位置に応じて治療体積が変化しており,PDT治療効果シミュレータを用いた術前の刺入条件の評価や最適化が必要であることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた生体組織内の光パワー密度分布,光感受性薬剤分布,光褪色プロセスを考慮した一重項酸素生成モデルの構築とその一連のシミュレーション実装が完了したため.また,臨床研究者と連携により評価手法を定めることができたため.
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今後の研究の推進方策 |
実装した一重項酸素濃度分布シミュレーションでは,膨大な反復処理によるモンテカルロ法に起因する計算処理時間が課題であった.そこで,GPGPUによる並列計算による高速化を図り,光照射条件を変更したその場での治療効果のリアルタイム表示を実現する.術前後のMRIやCT像と,光パワー密度計算により求まる一重項酸素濃度の比較から,殺細胞のための一重項酸素の 濃度閾値を評価する.治療体積と損傷体積から治療効果と安全性を定義し,最適化アルゴリズムにより最適な光照射条件を求める.まずは,全治療体積をカバーするための最小ファイバー数を求める手法を確立する.
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次年度使用額が生じた理由 |
計算高速化のためのGPU環境の導入,測定光学システムの部品選定が遅れたため.翌年度速やかに実行する.
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