本研究は,生体組織内の光パワー密度分布,光感受性薬剤分布,光褪色プロセスを考慮した一重項酸素生成モデルの構築し,確度の高い組織内照射光線力学治 療(iPDT)における治療計画手法を確立し,iPDT治療計画法の臨床適用に向けた有効性を明らかにすることを最終目標としている. 本年度は,焼きなまし法をベースとした光ビーム照射位置の最適化アルゴリズムを検討した.組織形状等により照射領域が制限される状況において,設定した光照射回数におけるカバー率を向上させるアルゴリズムを実装した.臨床データを用いた最適化を実施に向けて,脳MRIデータから三次元生体組織数値モデルを構築するために,組織領域のセグメント手法を実装した.構築した外科切除後を仮定した脳組織に対して,PDTの光照射最適化アルゴリズムにより,光照射カバー率を向上できることを数値シミュレーションにより実証した.治療条件で想定される光照射に関する制約を設定し,最適化可能であることを確認した.また,シミュレータの適用例として,末梢肺癌の光線力学治療における光照射プローブに関して,直射型プローブと側射型プローブの定量評価を実施した.開発したシミュレータを用いて,腫瘍カバー率を定量比較することにより,側射型プローブが一度の照射で大きな腫瘍体積を光照射可能であることを示した.治療可能推定領域を視覚的に提示することにより,将来的な治療条件の設定に向けた有効性を確認した.
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