研究実績の概要 |
畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて、眼底画像から網膜症病変を自動検出する手法の開発に取り組んでいる。本課題では、CNNの教師データとなる大量の病変画像を用意できないことを前提として、敵対的生成ネットワークを用いたイメージデータオーギュメンテーションの研究に取り組んでいる。前年度にCramer-GAN(以下、GANとする)の可能性が示唆されたため、本年度は硬性白斑の人工的な画像生成を対象として詳細に検討した。GANのGeneratorの各層に乱数を付与すると共に、各層に任意の係数を乗算することによって、より多様性のある画像群を生成できるようにした。13種類のHaralik特徴によるt-SNEを用いて実画像とGANの分布を比較したとき、両者が類似することを確認した。このことは、GANが片寄りなく多様な画像を生成できることを意味する。 また、GAN以外のデータオーギュメンテーション法である画像の回転処理とGANを組み合わせて、CNNの学習への寄与についても実験検証を行った。本年度は、GANと回転処理による生成画像の割合を1:1とし、本物の硬性白斑画像の枚数を10倍にしてCNNに学習に適用した。硬性白斑画像3,000枚を30,000枚に拡張して、正常画像30,000を加えて学習したCNNを用いて、各6,000枚の正常画像と硬性白斑画像に対する評価実験を行った。比較対象として、生成画像なしで学習させたCNNも用意した。生成画像有りのCNNのAccuracyが0.88、生成画像なしのCNNが0.84であったことより、生成画像の有用性を確認できた。眼底画像において、硬性白斑は白い塊となることから、GANは放射線画像における癌病変のデータオーギュメンテーションなどへの摘要も可能であると考える。
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