研究課題/領域番号 |
19K12831
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
中村 尚武 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 上席研究員 (10066722)
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研究分担者 |
新田 哲久 滋賀医科大学, 医学部, 非常勤講師 (40324587)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | バイオメタル / 寒天ファントム / 生体肝臓 |
研究実績の概要 |
2019年度研究計画書にしたがって、先ず発熱材の精査と評価を行った。発熱材として、予備実験の結果を踏まえて、最初にバイオメタルファイバー(BMF)を取り上げ、これを0.45㎜径のエナメル線と結線し、電圧電流を様々な値に設定して発熱具合を調べた。その結果、目的(発熱温度60℃、持続時間10分)を満たす一定の成果を得た。その後、バイオメタルヘリックス(BMX)の存在が分かり、これを用いて同様のテストを行って、ほぼ同様の結果を得た。BMXの単位長さ当たりの抵抗値はBMFのそれに比べて約7倍であることから、結果的に、より短いBMXの使用でも同等の結果が得られることが分かった。このため、本研究ではBMXを採用することとし、予備として発熱材候補に挙げていたペルチェ素子を用いた実験は行わないことにした。 次いで、7フレンチのカテーテルに挿入可能なサイズに設計し直した焼灼器具のプロトタイプを作成した。その際、当初予定した0.03㎜径のマグネシウム合金製ワイヤーは未だ市販されておらず、開発会社との共同研究にのみ提供されることが判明した。このため、本研究においては0.26㎜径のエナメル線を使用することにした。また、結線には当初導電性接着剤の使用を予定していたが、予備実験の結果結線作業に予想以上の手間と時間がかかることが分かった。したがって、これに替えて外径0.8㎜、内径0.3㎜、長さ2㎜の極小銅製チューブを使用し加締めすることで結線することにした。 これらを用いて作成したプロトタイプの焼灼器具を用いて、最初、模擬生体としての「寒天ファントム」を用いて焼灼実験を行った。その結果予想通りの結果が得られたので動物実験に移行し、対象を「ウサギの生体肝臓」に切り替えて実験を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度研究計画書に記載したキーワードは「発熱材の精査と評価」および「プロトタイプの作成と評価」である。 これに基づいて、発熱材については事前調査の結果を参考に、最初バイオメタルファイバー(BMF)の有効性について検証した。その結果、目的(発熱温度60℃、持続時間10分)を満たす材料であることが分かった。7フレンチカテーテルへの装着を考慮すると、発熱材の一層の小型化が必要なので更に材料を精査したところ、バイオメタルヘリックス(BMX)の存在が分かった。BMXの単位長さ当たりの抵抗値はBMFのそれに比べて約7倍であることから、より短いBMXの使用で同等の結果が得られるので、発熱材としてBMXの採用を決定した。 次いで、7フレンチのカテーテルに挿入可能なサイズに設計し直した焼灼器具のプロトタイプを作成した。その際、当初予定した0.03㎜径のマグネシウム合金は未だ市販されていないので、本研究においては0.26㎜径のエナメル線を使用することにした。また、結線には当初導電性接着剤の使用を予定していたが、結線作業に予想以上の手間と時間がかかるので、これに替えて外径0.8㎜、内径0.3㎜、長さ2㎜の極小銅製チューブを使用した。 これらの材料を用いて作成したプロトタイプ焼灼器具の有効性を確かめるために、模擬生体としての「寒天ファントム(模擬生体)」を用いた焼灼実験を行った。その結果、予想通りの結果が得られたので、2019年度の計画が順調に進捗したと判断し、予算の前倒しを申請した。この申請が受理されたので、更に研究を展開するため、対象を「寒天ファントム(模擬生体)」から「ウサギの生体肝臓」に切り変えて動物実験を開始し、現在も継続中である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画書に記載した2020年度以降のキーワードは「評価」、「極小化」、「適用試験」である。 研究課題について、2019年度中に得られた研究結果を視野に入れ、先ず「評価」と「極小化」に焦点を絞って研究を遂行する。現在、対象を「ウサギの生体肝臓」にした動物実験を実施中であるので、これを更に続け、必要なデータを収集・蓄積する。その際、焼灼状況・効果のみならず、使用予定のカテーテルのサイズを考慮して、焼灼器具の一層の小型化に挑戦する。 これらの実験の結果にもよるが、必要に応じてプロトタイプ焼灼器具の改良を更に柔軟に進め、引き続き「動物(例えばウサギ)実験」を実施する。プロトタイプの焼灼器具では、これまで「目的温度に十分到達するか?」、「目的温度が必要時間継続できるか?」に注目して進めてきたが、今後はこれらに加えて発熱材と対象(例えばウサギの生体肝臓)との接触部分の状況に問題がないかどうかにも注目しながら実験を進める。もし必要があれば両者の間に間仕切りを配置するなどの改善も検討し、その材料も同時に検討する。 以上に加えて、現在電力の供給源として直流電源装置を使用しているが、必要電圧が3V程度であるので、電源を充電式電池へ置き換えることを検討する。この電源電池を小型の電圧・電流制御装置と共にカテーテル操作部分にセットすることで電力供給源を確保することとし、重くて嵩張る直流電源装置をカテーテル周辺に設置する必要をなくす。 最終的に、当初目的通りの「簡便で安価な癌焼灼療法器具」を完成させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究において重要な材料であるBMXは、0.1㎜径の芯棒に0.05㎜径のBMXをコイル状に巻き付け、外径を0.2㎜に仕上げて作成されている。このため、使用に際しては事前に芯棒を抜いてBMXのみのコイル状にする必要がある。この作業を2019年度予算で購入した実体顕微鏡下で行っている。すなわち、顕微鏡既設の試料台の上で、先端が鋭利なピンセット2個を用いて、一方で全体を抑え、もう一方でコイル部分を「しごく」形で少しずつコイルを芯棒からずらし、最終的に芯棒を抜く。その際、試料台が硬質プラスチック製であるため、度重なる「しごき」により、試料台の表面が少しではあるが削られる。これが度重なると削りかすが大事なBMXに一定量付着し、以後の発熱実験の際不都合である。これを避けるため既設試料台の上にガラス板を取り付け、その不都合を避けるようにした。年度末近く、このガラス板の購入費として納入業者からの見積額を予め2019年度予算に組み込んでいた。しかし、この「ガラス板」の納品時の請求額が業者の見積額と比べ2,135円安く、この額が「次年度使用額(B-A)」である。 この次年度使用額は次年度予算の物品費と合算して執行する予定である。
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