研究課題/領域番号 |
19K12831
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
中村 尚武 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 上席研究員 (10066722)
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研究分担者 |
新田 哲久 滋賀医科大学, 医学部, 非常勤講師 (40324587)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マイクロヒーター / 生体肝臓 / 小型軽量電源 |
研究実績の概要 |
2020年度は、コロナ禍により研究環境に一定の制約を強いられたが、結果的にはほぼ計画通り研究を進めることが出来た。 先ずウサギの生体肝臓を対象にした動物実験を実施した。実験は順調に進捗し、バイオメタルヘリックス(BMX)が発熱体として十分機能すると評価するに値する一定の結果を得た。これはBMXの癌焼灼療法用器具への具体的応用につながる成果である。 これらの実験により一つの検討課題が判明した。複数のマイクロヒーター(MH)を作成して逐次評価実験を行ったが、作成したMHごとに抵抗値の不揃い、つまり発熱量に若干の差異が生じたことである。もしMHの抵抗値がそろっていれば印加電圧も一定で同じ発熱量が得られるので、施術の際の操作が簡便になる。当然これを視野に入れMH作成時には使用するBMXを同じ長さにカットして、結果的に同じ抵抗値を有することを目指すが、通電用リード線とBMXとの連結に極小スリーブを用いたために発熱量の差異が生じたと考えられる。つまり、極小スリーブの一方の側にBMXの一端を通し、加締めによって連結する。その際、極小スリーブへのBMXの挿入長を一定にすることは、銅製スリーブが不透明であるため不可能である。これがMHごとの有効抵抗値に差異が生じた原因である。したがって2021年度の研究実験ではこの点を改善する実験を行う。 一方で、これまでの研究実験ではMHへの電圧印加を市販の直流電源装置で行ってきたが、使用環境では軽量で簡便な電源が必要で、かつ、可能な限りカテーテル本体に装着して施術の利便性向上を図る必要がある。このため、先ず、簡易型電源の作成を行った。一応、使用可能な軽量電源を作成できる見通しを得た。2021年度の目標はカテーテル本体への装着可能な形状を検討すること、使用必要時間に耐えるより高性能な電池を準備することである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の研究実験は、年度開始早々の4月初めからコロナウィルス感染拡大による大学構内入構禁止措置、その後6月下旬からの大学構内入構自粛措置などの影響を少なからず受けたため、十分な実験時間、実験環境を確保する事に苦労した。幸い前年度の進捗が当初計画を上回り、予算前倒しも認められて進めた結果、2019年度は研究を当初計画より上回って終えることが出来た。このため、本年度当初計画からの研究の遅れを考慮しても、2年目の終了時点では、ほぼ当初計画通りに進捗したと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロヒーター(MH)作成時に生じるMHごとの発熱量の差異は使用したバイオメタルヘリックス(BMX)の有効長の差異によることは明らかであり、この差異をなくせばMHの発熱量の差異も改善すると考えられる。 どのようにしてその差異を小さくするかについて、通電用リード線とBMXとの連結方法を改善する試みを行う。当初の研究計画では、通電用リード線として新開発のマグネシウム合金製細線(外径0.03㎜)とBMXとを最新の導電性接着剤を用いて連結する予定であった。しかし、新開発のマグネシウム合金製細線は共同研究が前提でないと提供できないとの開発会社からの返答のため、これの使用を見送った。その代替措置として通電用リード線として市販のエナメル細線(外径0.26㎜)を用いることとし、BMX(内径0.2㎜)との連結に極小スリーブ(内径0.3㎜)を採用してきた経緯がある。これまでのMH作成経験と実績により微細加工に対する十分な経験も積んでいるので、今年度は内径0.1㎜のBMXに、例えば市販品である外径0.10㎜程度のエナメル線を通電用リード線として挿入後、導電性接着剤を用いて接着固定する。この方法では目視により挿入長を一定にすることが可能であり、有効抵抗値差異の問題を改善することは可能であると判断している。その上で、こうして作成したMHを用いて生体肝臓を用いた実験を行い、より望ましい実験結果の取得を試みる。 また、使用電源については、これまでの結果を考慮しつつ、実用段階を視野に入れて、市販品をベースにカテーテルへの装着可能な電源開発を目指す。 最終年度であるので、これらの実験結果をもとにして、癌焼灼療法モデル器具の完成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナ禍の影響で実験時間が相当制約され、結果的に予定していた実験をすべて実施することが出来ず一部を割愛した。このため、実験に必要な物品費などの執行が予定通り進まず、当初執行予定の予算の一部が未執行になった。未執行分は2021年度に繰り越し、執行する予定である。
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