研究課題/領域番号 |
19K12833
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
高久 裕之 仙台高等専門学校, 総合工学科, 研究員 (20705016)
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研究分担者 |
岩井 克全 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (10361130)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中空ファイバ / 赤外レーザ光 / 先端機能デバイス / レーザ治療 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、内視鏡による低侵襲レーザ治療を念頭に、曲げ半径15 mm程度、曲げ角270度を安全に、そして安定して実現し、治療用のCO2レーザ光とEr:YAGレーザ光の複合赤外レーザ光と視認用の可視レーザ光を同時に伝送可能とする内視鏡用光伝送路を開発することにある。Ni-Tiパイプは、超弾性合金と形状記憶合金の特長を有し、内視鏡の復元力の要求に最適であり、無毒、耐腐食性、生体適合性など内視鏡用伝送媒体に適している。そのため、内径530μm の太径中空Ni-Tiファイバを実現できれば、軽量で普通鋼なみの強度により、内視鏡の可撓性を大きく制限することがなく、曲げても破断しない安全性と、優れた生体適合性と耐食性により、赤外伝送路の再利用化による経済性のメリットが生じると予想される。高信頼性・再利用性・高機能中空Ni-Tiファイバ(内径530μm、長さ0.2~1 m)の実現を図る。2019年度の研究実施成果を下記に示す。 内面平滑化膜として、アクリルシリコーン樹脂を用いる。内径533 μm、外径635 μm、長さ30 cmのNi-Tiチューブにアクリルシリコーン樹脂溶液 (濃度45.5 wt%)を、送液速度4 cm/minで送液し、その後、窒素ガスを流しながら、室温乾燥を1時間行った。内面平滑化膜の成膜後、銀鏡反応により銀膜の成膜を行った。内装平滑化膜は3回重ね塗りをすることで、伝送特性は低損失化していくことが分った。内面平滑化膜つきNi-Tiチューブを母材とした銀中空ファイバの赤外損失スペクトルをFT-IRを用いて測定した。アクリルシリコーン樹脂膜の重ね塗り回数は3回である。CO2レーザ光の波長10.6 μmにおいて、内面平滑化膜つきNi-Tiチューブを母材とした銀中空ファイバは、伝送損失7 dBとなり、Ni-Tiチューブを母材とした銀中空ファイバの損失値より、低損失となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度の研究実施計画の通り、内面平滑化膜内装太径銀中空Ni-Tiファイバ先端素子(内径533 μm 、長さ30 cm)の製作を行うことが出来た。内面の平滑化ポリマー膜として有効なアクリルシリコーン樹脂材料を明らかにした。また、内面平滑化膜の成膜方法を明らかにした。その後、銀鏡反応を用いて、Ni-Tiチューブに銀膜を成膜し、良好な銀膜を成膜できた。FT-IRを用いて、赤外波長損失特性を測定し、波長10.6μmにおいて、伝送損失は約7dBであった。よって、充分に使用可能な銀中空Ni-Tiチューブ先端素子を製作できた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の研究実施計画を下記に示す。 内面平滑化用ポリマー膜の成膜技術の開発を行う。太径中空Ni-Tiファイバ(目標長さ20~100 cm)に対して内面平滑化膜の成膜技術を確立する。送液速度、乾燥条件など成膜条件を明らかにする。内面平滑化膜内装太径銀中空Ni-Tiファイバの可視~近赤外波長損失特性の測定を行う。次に、効率のよい切開が可能なEr:YAGレーザ光と止血効果を有するCO2レーザ光を同時伝送可能な高信頼性・再利用性・高機能太径中空Ni-Tiファイバの製作を行う。高反射用光学膜として環状オレフィンポリマー(COP)を用い、膜厚を数十nmオーダーで精密に制御し、最適膜厚の成膜を行う。Er:YAGレーザ光、CO2レーザ光、並びに可視パイロット光の同時伝送に最適な光学膜厚の設計と最適膜厚の一様成膜技術を確立する。
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