研究課題
代表者らはこれまで、培地温度を制御する独自のシステムを用い、神経分化モデル細胞に対し温度制御式反復温熱刺激(略称:TRTS)を負荷し、この刺激のみで神経細胞分化を誘導する方法を開発した。しかし、前骨芽細胞の骨芽細胞分化におけるTRTS の作用は全く不明であった。そこで本研究計画では、上述の培地温度制御系を用い、前骨芽細胞株の骨芽細胞分化に与える影響やその機序の解析を実施し、これによりTRTS を活用した細胞環境温度制御による低侵襲かつ安全な骨芽細胞分化誘導法を開発し、またその分子機構を解明することを目指した。代表者らは、まずTRTSの適切な負荷条件を明らかにするための実験を行った。その結果として、通常培養下の前骨芽細胞様細胞株MC3T3-E1 細胞にTRTS を負荷した時、加熱プレート温度42°C以上のTRTS負荷では時間経過により細胞死が誘発され、増殖が抑制されるのに対し、39.5°CのTRTSを負荷した場合、37°Cの培地で通常培養した陰性対照群と比較して、細胞増殖が抑制されないことを確認した。次に、前骨芽細胞のTRTS のみでの骨芽細胞分化誘導が可能かを検討した。その結果、39.5°CのTRTSを負荷した場合、骨芽細胞分化誘導を有意に促進し得ることを発見した。さらにこれらの結果をもとに、前骨芽細胞の骨芽細胞分化における異なる刺激時間のTRTS の影響をより詳細に検討した。その結果、1日2時間、6時間、12時間、18時間の刺激で、それぞれ骨芽細胞分化誘導を有意に促進し得ることが分かった。しかしながら、骨芽細胞分化は必ずしも刺激時間に応じて促進されるわけではないことも示唆された。いずれにせよ、本研究はTRTSがMC3T3-E1細胞の骨芽細胞分化を誘導可能なことを示唆しており、骨再生に有効な新手法を提供する可能性がある。
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