近年、ウイルスや細菌(新型・薬剤耐性型を含む)による感染拡大や食中毒が問題となっている。特に、2020年現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中で猛威を振るっており非常に深刻な社会問題となっている。これらの病原体を高精度に特定する上で必要な手段は遺伝子検査に限られているが、既存の検査法は特定遺伝子の判定に多くの時間を要する。したがって、現在、ウイルスや細菌・ガン特有の遺伝子等を‘その場’で迅速かつ高感度に特定できる遺伝子検査システムが求められている。本研究は、迅速遺伝子検査装置に対応した試薬キットの開発と試作化を行い、「迅速/高感度検出を実現できる新規遺伝子検査システム」をいち早く社会実装することを目的に実施している。 2019年度は、主に「迅速/高感度検出対応『遺伝子検査試薬』に関する網羅的調査」および「迅速/高感度検出実験系の構築」、「迅速/高感度化に有効な試薬成分等の検証・開発」を実施した。それぞれの取り組みの成果を以下に示す。 ①遺伝子検査試薬に関する網羅的調査:学術論文や先行特許文献の網羅的調査を行い、迅速/高感度化を実現し得る試薬成分/添加剤/ポリメラーゼ候補等を選定・購入した。また、小型の高速リアルタイム PCR装置と専用容器(チップ)を選定・購入した。 ②実験系の構築:高速リアルタイムPCR装置および専用容器の独自改良を行い、迅速/高感度検出実験系を構築した。 ③迅速/高感度化に有効な試薬成分等の検証・開発:本実験系において、上記①で選定した試薬成分/添加剤/ポリメラーゼ等の効果の有無を網羅的に検証し、有効な試薬成分や増幅条件(パラメーター)等を複数見出すなど、重要な独自ノウハウを把握した。また、試薬開発の端緒として、マイコプラズマ菌等細菌由来の市販ゲノムDNA を用いて、迅速/高感度試薬の開発に着手した。
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