令和5年度は、昨年度に引き続き、研究計画に記載した肺炎マイコプラズマや百日咳菌など感染症の細菌やウイルスの迅速かつ高感度な遺伝子検査用試薬の研究開発および試作化と、それに最適化した遺伝子検査システムの研究開発を実施した。これまでの研究活動で構築した高速条件下でも安定的に核酸増幅が可能な独自の実験系(検出装置を含む)を活用し、各病原体に対応した機能性物質修飾型蛍光プローブやプライマーのさらなる開発に取り組んだ。具体的には、蛍光プローブへの新規機能性物質の修飾検討や、機能性物質の修飾位置・挿入配列・挿入頻度の効果検証、試作試薬の各種パラメーターの最適化、検出装置・測定チップの改良などを実施した。また、独自の迅速検出システムを活用し、病原体由来のゲノムDNA(精製済み)の増幅確認実験を行った結果、4~5分程度という迅速検出条件下において、従来システムと同等の検出感度を実現した。ヒトゲノムなどの夾雑物が添加された条件下でも同等の結果が得られ、夾雑物による影響も見られなかった。さらに、本検出システムを活用し、薬剤耐性型肺炎マイコプラズマ菌(プラスミドDNA)の検出実験を行い、迅速判別にも成功した。 また、これまでの研究で得られた各種データを大学の知財部門と共有し特許出願に向けた検討を実施するとともに、遺伝子検査装置の開発・製造販売を手掛ける医療機器メーカーや診断薬メーカーの担当者とも情報交換を行い今後の協業に向けた検討を行った。さらに、研究成果を公表するために学術論文の執筆や学会誌に投稿する準備を進めた。 本研究は、従来の遺伝子検査システムと同等の検出感度を維持しながら、迅速で高感度な遺伝子検査を可能にする新しい検査試薬等を開発することを目的としており、その成果は迅速な病原体検出を実現し、医療や検査分野において重要な意義を持つ。また、企業等との協業により、実用化への道も開かれている。
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