本研究では,血管内治療中のX線画像から,ガイドワイヤーなどの血管内治療用デバイスの3次元位置を推定する方法を提案し,これに関して,以下の2つの目的を掲げていた.①この位置推定法の精度や,精度を支配する要因を明らかにする.②血管内での適切なデバイス操作(押す/引く,右/左回転)を判断するための指標を開発する. 前者については,2020年度で技術的な目途が立った(0.3 mm程度の推定誤差で推定可能)ので,2021年度においては後者について,取り組んだ.指標として,デバイス手元での押すや回転などの操作量に対するデバイス先端の変位の比率を(変位)応答性として提案し,それと血管形状の関係について調査した.数値計算と実験を併用して評価を行った.数値計算を用いて,様々な血管形状における応答性を評価した.屈曲部曲率半径が小さいほど,押す操作の応答性が大きくなることを明らかにした.押す操作の応答性が,屈曲部の影響によって変化が大きいが,回転操作に対する応答性は,部位による影響は小さく,応答性の数値の変化が小さいことがわかった. 実験による応答性の評価においては,カテーテルとガイドワイヤーの2種類を組み合わせた状況下での応答性を評価した.その結果,回転操作に関してカテーテルとガイドワイヤー間の距離による影響はなく,押す操作についてのみ影響をおよぼしていることを明らかにした.さらに治療中の事故の原因になるジャンピング現象におけるカテーテルとガイドワイヤー間の距離についても調べ,カテーテルがガイドワイヤーに近いほどジャンピング現象が起こりにくいことを明らかにした.
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