研究課題/領域番号 |
19K12844
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
山崎 文靖 高知大学, 医学部附属病院, 特任教授 (10243841)
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研究分担者 |
弘田 隆省 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 助教 (10437741)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 低侵襲治療システム / 血液透析 / 低血圧 / 空圧パンツ / 血圧制御 |
研究実績の概要 |
透析中の血圧低下による透析困難症は透析の大きな阻害要因となっている。これまでわれわれは、重度起立性低血圧治療のため、硬膜外カテーテルを用いた脊髄電気刺激法および空圧ショックパンツを用いた下半身圧迫法による人工圧反射装置を考案し、プロトタイプを開発した。今回、透析低血圧の患者に、われわれが開発中の非侵襲的空圧パンツを用いた装置を応用し、透析低血圧を防ぐことにより目標徐水量を達成し十分な透析が可能かどうかの実験的臨床研究を行う。3年間の実験的臨床研究により、1) 透析低血圧への治療効果の評価と空圧制御機の最適化 2) 透析低血圧へ本装置を用いることの問題点の抽出、自動化への開発、を到達目標とする。 H31(R1)年度は、臨床研究審査委員会への申請を開始し、透析中の血圧低下および処置の状況を2施設で検討した。4週間12回の透析中に100mmHg以下の血圧低下により除水速度減速などの血圧低下防止の処置をした症例、回数を抽出した。施設Aでは総患者数347例で、1から12回の血圧低下を起こした患者の数はそれぞれ、24(6.9%)、14(4.0%)、15(4.3%)、13(3.7%)、9(2.6%)、8(2.3%)、5(1.4%)、4(1.2%)、3(0.9%)、7(2.0%)、3(0.9%)、0(0.0%)で、total 105例(30.3%)であった。施設Bでは総患者数47例で、4(8.5%)、3(6.4%)、3(6.4%)、0(0.0%)、0(0.0%)、1(2.1%)、0(0.0%)、1(2.1%)、1(2.1%)、0(0.0%)、1(2.1%)、0(0.0%) で、total14例(30.3%)であった。6回以上の症例は、施設Aで30例(8.6%)、施設Bで4例(8.5%)であった。以上より、おおむね10%弱の症例が今回の検討の対象となりえることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床研究審査委員会提出前の検討が遅れている。 また、コロナ肺炎の影響で慢性透析施設に行くことが出来ず、患者リクルート前の検討も遅れているために、透析施設の選定が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
①慢性透析施設を選定するとともに、臨床研究審査委員会への申請を完了する。また、対象患者を透析低血圧の頻度が多い症例からリクルートする。②対象患者での検討の開始:今回の検討は、患者の血圧を見ながら医師がパンツ圧を決定しマニュアルで装置に入力する方法で開始する。血圧モニタは透析装置が30分ごとに行うため、血圧の変動、低下を医師が観察する。収縮期血圧が100mmHg未満に低下した場合、パンツ圧を10mmHgより加圧する。以後5分ごとの血圧測定で100mmHg以上となるまでパンツ圧を10mmHgずつ上昇させる。最大圧は60mmHgとする。また、このとき徐水量をどこまで減少させるかどうかも検討する。血圧データ、透析除水速度、除水積算量などは透析装置データシステムに格納されるため、パンツ圧変化と合わせてPC上で解析する。③患者での検討の継続・データの蓄積:②を継続し症例数を増やす。④治療効果の評価と問題点の抽出:蓄積したデータを解析し、徐水量減少の抑制の程度を評価する。また、装置の装着感、圧迫の程度も評価し、最適化へのデータとする。 研究分担者・弘田隆省医師(循環器内科)のほか、研究協力者として佐藤隆幸医師(循環制御学)、近澤成和医師(いずみの病院、透析部長・泌尿器科部長)、小松文都医師(土佐市民病院泌尿器科、透析センター)、武田功医師(島津病院、腎臓内科・外科)、松田卓也技師(島津病院、透析室技師長)、が参加する。空圧パンツは国内で唯一製造している藤倉航装の斎藤智幸が、制御装置は東京航空計器の平本享史が研究開発協力者として参加する。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析ソフトウェアの購入を遅らせたことによる。2020年度は、消耗品費として、データ保存用メディア、空圧パンツと制御装置をつなぐ空圧チューブ、継ぎ手を計上する。調査・研究旅費は空圧パンツ・制御装置の改変打ち合わせに用いる。謝金費として、前年と同様、研究補助員を1名確保するための経費を計上する。
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