研究課題/領域番号 |
19K12849
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
尾川 浩一 法政大学, 理工学部, 教授 (00158817)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | SPECT / ガンマカメラ / ピンホール / モンテカルロシミュレーション / 静止型データ収集 / 動態解析 |
研究実績の概要 |
次世代ガンマ線検出器を想定したマルチピンホールSPECTシステムの設計要件の検討に関しては、今までの3検出器型マルチピンホールSPECTシステムに関する事前の検討から、最適なピンホール数を11として基本システムの設計を行ってきたが、本研究ではピンホール径と空間分解能、画質などの関係を総合的に判断できるシミュレーション方法の構築を行った。まず、次世代のガンマカメラの固有空間分解能については、MPPC検出器のような従来のNaI検出器の半分程度の空間分解能を有するものを想定して、シミュレーションを実施した。モンテカルロシミュレーションでは、検出器に入射するガンマ線の位置を検出器の固有空間分解能を有するガウス分布の乱数を用いて変化させ、実際の計測に忠実なシミュレーションを行った。この結果、検出器の固有空間分解能が高い場合には、ピンホール径が小さい方が、カウントが低下し量子雑音は増加するものの概して高い空間分解能の画像が得られることが明らかになった。一方で、ピンホール径を小さくすることによって発生する量子雑音を低減する研究も実施した。この方法としてはピンホールの開口を点広がり関数と考え、投影データをこの関数でデコンボリューションすることでぼけを取り除くものとした。基本的にはこの点広がり関数はシフトバリアント(位置依存)であるが、簡単のため単一の関数を用いてぼけの除去を行った。この結果、量子雑音の影響を低減した状態で、空間分解能の高い画像を得る事ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ピンホールイメージングにおいては、ピンホールの形状の点広がり関数が投影データの収集において大きな影響を与える事は予想していたが、検出器側の固有空間分解能が向上したときに、この影響が無視できないことが明らかになった。従来、この影響を低減するために7ray法などの空間分解能の向上手法が提案されており、検出器側の固有空間分解能が低い場合には、この手法でも一定の効果があるが、高い固有空間分解能のシステムではあまり有効でないことが、この研究で明らかになった。このため、ピンホールの開口の点広がり関数を用いてデコンボリューションする方法を適用することにした。デコンボリューションのプロセスは周波数空間上の処理でもあり、遮断周波数の値や遮断方法などに大きな影響を受けるが、アーチファクトなどを低減しつつ高い空間分解能の画像を再構成することができた。しかしながら、パラメータ選択などに関して、この作業が難航した。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで、申請書に記載した当初の計画に沿って、研究がほぼ実施できているために、問題はないと考えているが、再構成画像の画質をさらに改善するために、厳密なシミュレーションを実装し実施することを想定すると、モンテカルロ計算と画像再構成において計算パワーがさらに必要となると考えられ、次年度はGPUを増設して研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの関係による研究発表等の抑制、ならびに次年度繰越によって備品(コンピュータ)を購入する事で、研究をより効率的に進める事ができるように、本年度の使用額をおさえ、翌年度に回した。この金額をもちいて次年度コンピュータなどを購入する予定である。
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