研究課題/領域番号 |
19K12852
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
下戸 健 福岡工業大学, 情報工学部, 准教授 (40412457)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 再生医学 / 医用ロボット / 多細胞スフェロイド / 細胞構造体 / 細胞凝集塊 |
研究実績の概要 |
ロボティクス技術を用いて,血管や心臓の3次元細胞構造体を作製するために必要となる,目的の細胞比率を有した細胞凝集塊(スフェロイド)を形成するシステムを開発することが本研究の目的である.これに関し,細胞比率のコントロール可能な多細胞スフェロイドの作製を実現させるために,研究計画に従い以下の3項目について遂行した. まず,本研究の細胞培養環境においても多細胞スフェロイドを作製することができるか,手技で予備実験を行った.皮膚線維芽細胞(NHDF)と臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いた実験では,問題なく作製できることを確認した.多細胞スフェロイド形成システムが作製するスフェロイドと比較するために,参考文献を参考に細胞比率を変更させた多細胞スフェロイドを手技で計画的に作製した. 次に,開発してきたスフェロイド形態評価システムの機能拡張を行った.スフェロイドプレートにある全てのスフェロイドの面積,直径,円形度を測定することができる機能を有している.これにシェードカラー処理を応用したアルゴリズムを組込み,細胞濃度分布を可視化させるようにした. 最後に,スフェロイド形成システムの細胞播種モジュールの開発を行った.開発しているシステムは作業効率を向上させるために,スカラーロボット第4関節先端に2×2チャンネルのチップ脱着可能ピペットを取り付け,滅菌済みのチップを装着して細胞を扱うようにした.これに合わせて,円筒の容器底に設置できるテーパ形状の冶具を設計し,細胞懸濁液のリザーバーとして使うようにした.作業者がNHDFとHUVECのそれぞれの懸濁液をシステム内に設置し,システムの操作画面で任意の細胞比率を入力すると,多細胞スフェロイド用の細胞懸濁液を自動で調合し,専用のスフェロイドプレートに播種してスフェロイドを作製するようにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度はスフェロイド形成システムの細胞播種モジュールの開発が目標である.研究計画では細胞数の調整方法の確立とモーションのプログラミングに分けられるが,後者の開発期間は2021年度前半までであり,問題なく両者の開発を行えている.さらに,実際の細胞を扱うため細胞培養も行う必要があるが,本学に整備された細胞培養環境においても,大きな問題もなく培養を行えている.これまでの研究成果は,日本機械学会やInternational Conference on Biomedical Engineeringで報告しており,研究の進捗状況は順調である.
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今後の研究の推進方策 |
スフェロイド形成システムの細胞播種モジュールについて,モーションを検討し再現性があり目的の細胞比率を有した多細胞スフェロイドを得られるようにする.さらに,目的の細胞比率を有した多細胞スフェロイドの作製実験と評価を行っていく.その際,引き続きNHDFとHUVECを用いて検証していく.現在のシステムは,作業者が細胞数を調整したNHDFとHUVECの細胞懸濁液を用意している.NHDFとHUVECの比率入力に加え,NHDFとHUVECの細胞懸濁液中の細胞数や作製する多細胞スフェロイドの細胞数といったパラメータも入力できるようにし,多細胞スフェロイド作製の全自動化を目指す.多細胞スフェロイドの細胞比率や細胞生存率については,アッセイによる調査を予定しているが,評価方法は確立されていない.本研究体制における医学系研究者に協力を仰ぎ,解析および評価の検討を行っていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)細胞培養のための試薬や消耗品,および人件費において,若干ではあるが経費を抑えることができたことが理由である.
(使用計画)実験装置の改良に必要な部材の購入や,細胞培養で必要な消耗品の購入で使用する予定である.
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