心エコー図検査は、非侵襲的かつ、広く普及していることより、心臓病患者の治療管理や予後予測、デバイス移植術の適応決定時に必要不可欠な検査法である。3次元心エコーは各種心機能計測時に2次元心エコーのように幾何学的仮定を必要としないため、心臓MRI検査同様、心腔容量の測定に優れた検査法とされている。 私達は左室・左房容積比 (LV/LA volume ratio; LVLAVR) という新たな心機能指標を提唱した。LVLAVRは、左室の収縮能のみならず、拡張能特性をも内包した指標であり、既存の心機能指標より病態診断、予後予測に有用である可能性がある。最近3次元心エコー図画像を用い、左室、左房の容積曲線を作成する定量ソフトウェアが開発された。本研究の目的は、①心臓MRIを基準とし、本ソフトウェアの至適な設定を決定し、②前向きに収集した健常者3次元画像データからLVLAVRの正常値を求め、③後ろ向きに収集した3次元画像データを用いて、心疾患患者に対するLVLAVRの予後予測能を既存の心機能指標と比較検討することである。3次元全自動解析ソフトウェアによる左室容量、LVEFは、心臓MRI検査と極めて良く相関し、至適左室内膜検出閾値は90であることをもとに論文を作成、受理された。左室収縮末期、左室拡張末期のLVLAVRの、年齢別・性別の正常値を求めた。LVLAVRは男女とも加齢とともに進行性に減少し、年齢依存性があることが証明できた。また左室拡張末期LVLAVRは、左房機能と左室心筋重量が主に関与しているのに対し、左室収縮末期LVLAVRは、左室収縮能と左室心筋重量が主に関与していることを解明し、論文化し、受理された。最後に対象患者342例をもとに、左室拡張末期LVLAVRが予後予測に有用であることをまとめ、論文化し、受理された。
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