研究課題/領域番号 |
19K12854
|
研究機関 | 八戸工業高等専門学校 |
研究代表者 |
中村 嘉孝 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (00290685)
|
研究分担者 |
鎌田 貴晴 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (50435400)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | グラフェン / 皮膚ガスセンサー / 血糖値センサー / 六方晶窒化ホウ素 / 遷移金属ダイカルコゲナイド / 化学気相成長法 / スパッタリング法 |
研究実績の概要 |
グラフェンやカーボンナノチューブを用いたバイオセンサーは、半導体センサーなどに比べ計測限界が約2桁高く超高感度である。本研究の目的は、唾液や涙、そして、皮膚ガス(皮膚から放出される生体ガス)から血糖値やストレス度を計測できるグラフェンバイオセンサーを開発することである。本研究の大きな特徴は、 オリンピック水泳のマイケル・フェルプス選手ら多くの選手が使用している「カッピング療法」を応用する部分である。これは、カッピング(中空の容器)を皮膚に接触させ、容器の中を弱く真空にして皮膚を盛り上がらせ、血行を良くする療法である。本研究では、カッピングにより皮下の血液中からのガスの放散を促進させ、カッピング内部に皮膚ガスセンサーを配置することで、低濃度の皮膚ガスを検出するシステを開発している。更に、皮膚がんなどの病巣付近からの皮膚ガスの種類や濃度から、病状診断をする新たな診断技術の開発を最終的な目標としている。 令和2年度は以下の研究実績が得られた。 (1)六方晶窒化ホウ素(h-BN)結晶成長技術の開発:熱CVD法、プラズマCVD法、そして、スパッタリング法によりSiO2/Si、(111)Si、Ni箔、Cu箔の各種基板上へh-BN結晶を成長させることが出来た。前年度まではSiO2/Si基板上にグラフェンを直接転写していたが、ガス検出感度の向上のため、h-BN上にグラフェンを作成した。 (2)高品質グラフェンの合成法の開発:熱CVD法、プラズマCVD法により高品質グラフェンの合成を目指し、原料ガスの低濃度化と炭素溶解度の大きいNi箔を用いる事で、結晶核密度を制御することが出来た。(3)遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)の結晶成長技術の開発:多様な皮膚ガスを検出させるため、熱CVD法により遷移金属ダイカルコゲナイド(MoS2、WS2)結晶を成長させることが出来た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
皮膚ガスの検出感度を向上させるため、熱CVD法、スパッタリング法によりh-BNを作成でき、グラフェン/h-BN接合を作成することが出来た。また、多種類の皮膚ガスを検出するために、遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)二次元結晶を作成することが出来るなど、進捗状況は概ね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
検出感度を本来グラフェンが本質的に有しているレベルまで高めるため、以下の事項を進めていく。(1)グラフェン/スパッタh-BN/Siおよびグラフェン/CVD-h-BN/Siバイオセンサーの開発、(2)TMDs(MoS2,WS2)/スパッタh-BN/SiおよびTMDs(MoS2,WS2)//CVD-h-BN/Siバイオセンサーの開発、(3)局所的に発生する皮膚ガスの計測および分析技術の研究、(4)グルコース検出のためのフェニルボロン酸膜の合成技術の開発、である。
|