本邦で臓器移植を適応として承認されている10種の薬剤(アザチオプリン、ミゾリビン、ミコフェノール酸モフェチル、グスペリムス、エベロリムス、シクロスポリン、タクロリムス、バシリキシマブ、リツキシマブ、サイモグロブリン)を対象とした。移植は腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓、小腸、骨髄、造血幹細胞移植を対象とした。PMDA、FDA、EMAのホームページより審査報告書を入手し、適応、承認年月、臨床試験の有無、試験デザイン、国際共同または海外臨床試験の別、評価項目等と判断根拠について集計した。 本邦では上記薬剤は合わせて38件の適応で承認されている。米国では6薬剤14件の適応があり、欧州では4薬剤14件の適応がある。38件の適応のうち、臨床試験成績が審査資料として評価されていたのは8件のみであった。国内臨床試験成績が含まれていたのは4件で、うちランダム化比較試験(RCT)は2件(腎臓、造血幹細胞移植)であった。38件のうち、10件では公表論文・実態調査等に基づいて承認されていた。米国では14件のうち10件でRCTが実施されていた。欧州では14件のうち4件でRCTが実施されていた。日米欧いずれにおいても、肺移植、膵臓移植、小腸移植に関するRCTの成績は提出されていないが、本邦では5薬剤が承認されており、EUにおいて1薬剤が承認されていた。さらに、シクロスポリンは、臓器を特定することなく固形臓器移植を適応とすることに欧州内で統一されていた。年代別では、2010年まではRCTの結果が臨床試験成績として提出されていたが、2011年以降はガイドライン等に基づく承認が増加していた。 臓器移植に対する免疫抑制剤の承認状況から、再生医療における被験者数を考慮すると、他臓器での成績を参考に「固形臓器移植」等として既存の免疫抑制剤を再生医療に適用することも一法と考えられた。結果は臨床薬理学会で公表した。
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