研究課題
「第三者評価による放射線治療品質管理」は、がんの放射線治療の安全性確保に重要役割を果たすが、実施すべき管理項目は多岐に渡るため、評価する側とされる側の双方に多くの負担がかかる。そこで本研究では、まだ効率的な手法が確立されていないが、現代の放射線治療にとって重要な項目に関する新しい調査手法を開発する。第三者評価活動の継続性を高めるため、開発した評価手法が、評価を受ける施設はもちろん、評価する側の負担を軽減できるよう、インターネット経由のデータ提出とデータの自動解析を含めた包括的な第三者評価システムも開発する。平成元年度は、以下の通り、おおむね計画通り順調に進捗した。郵送調査手法とファントムの試作品の開発については、放射線治療計画における不均質補正の正当性評価のための調査手法に関する論文を研究協力者と共に発表した。今年度発表した調査手法に加え、過去に発表した放射線の照射位置を確認する手法を同時に達成可能なファントムの試作品を完成した。この試作品では、これまでのようにフィルム等の放射線検出器が挿入されておらず、撮影したファントム画像のデジタルデータのみで不均質補正の正当性と放射線の照射位置の解析が可能であり、フィルム解析などの煩雑な手作業を排除した。その他、調査手順マニュアルの原案を作成した。令和2年度では研究協力者の所属施設での試作品テストにより問題点抽出を行う。第三者評価データベースの構築については、外部のレンタルサーバ上でデータベースおよびウェブサーバを構築し、第三者評価を受ける施設からウェブページ経由で各種調査データの提出できるシステムを完成させた。令和2年度では、研究協力者の所属施設での試作品テストにより、データ解析の自動化機能の実装を進める。
2: おおむね順調に進展している
当初の達成目標である以下の3点について進捗状況を報告する。これまでのところ、当初予期していない課題は発生しておらず、概ね順調に計画が進展した。1.ファントムデザインの考案。放射線治療計画における不均質補正の正当性評価のための新しい手法に関する論文を本研究の研究協力者と共に発表を行った。今年度に開発した郵送ファントムの試作品では、今回発表したCT値・密度変換テーブルの評価に加え、がん治療のためのX線ビームの照射位置精度を評価するための機能を持たせた。以前、研究代表者が関わったグループで開発したファントムでは、照射位置の検証用のフィルム検出器が挿入されており、フィルムの測定誤差や解析の煩雑さが問題となっていた。一方、本研究ではフィルムを使わず、ファントムをCT撮影した画像データを解析することで、以前より高精度で照射位置を算出できるだけでなく、前述のCT値・密度変換テーブル評価も同時に実施可能なデザインになっている。2.第三者評価データベースの構築。令和元年度では、外部のレンタルサーバを使い、Linuxベースのデータサーバを構築し、ウェブページ上でデータ入力を入力行い、画像データ等をアップロードできるシステムを完成させた。データ登録を行うウェブページではパソコンでのアクセスはもちろん、iPadなどのタブレット端末、携帯電話でも閲覧、データ入力が可能な仕様とした。3.郵送調査手順の最適化とマニュアル作成。上記2点の進捗を踏まえ、郵送調査手順をまとめ、調査を受ける側及び調査を行う側向けの手順書の原案を作成した。
令和元年度の進捗を受け、令和2年度と3年度についても当初の研究計画に従い、以下の4項目について取り組む。現状では、研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での想定外の課題はない。1.ファントムデザインの考案。令和元年度に完成させた郵送ファントム試作品を研究協力者所属施設に順次郵送し、各施設にて治療計画に使用するCT撮影装置にて郵送ファントムを撮影し、実際の検証手順のテストを行う。その後、問題点を抽出し、ファントムデザインの改良を行い、令和2年度中に最終版のファントムデザインを完成させる。2.第三者評価データベースの構築。令和元年度に完成させた外部データサーバを用いて、研究協力者所属施設より、第三者評価に必要な関係データのアップロードをウェブページ経由で提出してもらい、問題点を抽出し、令和2年度中に更新を行う。3.画像データ解析ソフト開発。CT値・密度変換テーブルの評価のための解析プログラムはほぼ完成しているので、令和2年度は外部データサーバへの実装を行う。治療X線ビームの照射位置精度の解析については、プログラム言語Pythonを用いて、令和2年度中に開発行い、完成させる。4.輸送調査手順の最適化とマニュアル作成。令和2年度は元年度に完成させた試作品ファントムと外部データサーバを用いたテストにより、調査手順の最適化と共に、マニュアル作成を行う。研究協力者所属施設での試験運用とデータのウェブページ提出のテストを行い、問題抽出と改良を行うが、この作業と併せて、調査マニュアルの作成と更新を行う。このマニュアルの更新は研究期間終了まで逐次修正を行う。その他、当初の研究計画には含まれてなかったが、本研究で開発している第三者評価手法の海外展開を目指し、マレーシアのマラヤ大学との共同研究を提案中である。
当初の計画には含まれていなかったが、本研究で開発している第三者評価手法の海外展開を目指し、マレーシアのマラヤ大学との共同研究の打ち合わせを3月初旬に開催する予定であった。しかし、昨今の新型コロナ対策により海外出張が難しくなり、年度内の予算執行が間に合わなかった。令和2年度には、新型コロナの状況を考慮し、海外渡航が可能になれば、海外出張費の一部として執行予定である。
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Medical Physics
巻: 47 ページ: 1509~1522
10.1002/mp.14077