研究課題/領域番号 |
19K12866
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
末永 弘美 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (10372707)
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研究分担者 |
石川 剛 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (20569305)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 門脈圧亢進症 / 血管内皮機能 / FMD検査法 / 一酸化窒素(NO) / PSE / B-RTO |
研究実績の概要 |
慢性肝疾患の心血管イベント発症率が低いことは広く知られている。しかしながら、慢性肝疾患の動脈硬化について検討した報告は少ない。本研究では非侵襲的検査である血管内皮機能や血中一酸化窒素(NO)濃度など循環器領域からのアプローチによって門脈圧亢進症の病態レベルに応じた肝線維化治療法の選択や治療効果の予測を可能にするか否かを明確にすることを目的とする。これまでに、慢性肝疾患患者におけるNO調節経路として注目される内因性NOS阻害剤であるADMA(メチルアルギニン誘導体)を含むDDAH/ADMA/NOS/NO経路の分析によってNO産生機序を明らかにするために、第1段階として健常者、慢性肝炎および肝硬変患者(83症例)の血管内皮機能および動脈硬化関連検査とDDAH/ADMA/NOS/NO経路の内、DDAH、ADMA、NOの測定を実施した。その結果、FMD値は、対照群と肝硬変群に対し、慢性肝炎群が有意に高値を示した。NOxは対照群に対し慢性肝炎群、肝硬変群が有意に高値を示し、慢性肝炎では明らかにNOxが高く、これに伴いFMDも良好であることが示された。ADMA、DDAHともには3群でほぼ同程度で有意差はなかったが、DDAHは、慢性肝炎で他の疾患群よりもやや低い傾向を認めた。FMDとADMA間に相関関係は認めなかったが、FMDとADMA/DDAHの間には有意な正の相関関係を認めた。これはNOS阻害剤であるADMAが高いにもかかわらず、FMDが良好である可能性を示唆するものであった。また、症例数は少ないものの門脈圧亢進症の治療法であるPSE、BRTOの治療前後のFMD、NO、CO(心拍出量)の比較から、治療によってCOが低下した結果、NOも低下したことによってFMDも低下傾向にあることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実施施設が、コロナ患者受け入れ施設であることから、通常医療の意識的遅延体制によって本研究の対象患者の受け入れ頻度が抑制されたため、通常の症例数の確保が困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
コロナの影響から症例数が減少したものの、PSE,B-RTO治療前後の20数症例の症例検体の確保ができているため、これらの一括検査が可能な検体が揃った段階でELISA解析を実施し治療前後のDDAH/ADMA/NOS/NO経路の変化を明らかにする。また、現在遅れているPSE、BRTO患者を目標の30症例まで確保し、本研究の最終目標である治療前のFMD検査による治療後の肝機能を含めた治療効果の予測の可能性を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実施施設がコロナ患者受け入れ施設であったため、目標とした症例数の確保が困難であった。そのため、対象検体のELISAキットによる分析が遅れ、さらにはその結果の学会発表、学会参加、論文執筆などが実現できず、次年度使用額が生じることとなった。本年度は少しずつ集積した検体のELISA検査を行い、その結果の解析および論文執筆するための経費として使用する予定である。
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