研究課題/領域番号 |
19K12868
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
佐藤 泰憲 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (90536723)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 生物統計 / 臨床研究デザイン / 統計解析 / 基礎医学実験デザイン / 有意症 |
研究実績の概要 |
医学・薬学・健康科学の分野では「科学的根拠に基づいた医療(EBM)」が浸透しつつあるが,その一方で,統計的解釈の間違いや統計手法を誤用した学術論文報告が後を絶たない.本研究の目的は,① 医学研究における統計的側面の質を高めるために,臨床医学研究と基礎医学研究のための生物統計報告ガイダンスを作成すること,② そのガイダンスをもとに,医療系学問の専門性に応じた統計教育のあり方・方法をまとめ,学部・大学院の生物統計教育ツール・カリキュラムを開発することである.生物統計報告ガイダンスを適切に運用すれば,論文報告の統計的な誤りを大幅に低減でき,正しい医療の発展につながる.
本年度は,基礎医学研究の統計手法・研究デザイン調査に取り組んだ.具体的には,臨床医学論文の調査及びプレテストをもとに,基礎医学雑誌「Nature」の原著論文から論文抽出作業を実施した.648論文が抽出され,調査票及びNature誌の生物統計報告ガイダンスに基づき一次調査を実施した. その結果,未だに多くの基礎医学論文がp値のみが示され,統計手法の記載や論文中のデータの要約・結果の提示が不十分であることが示唆された.また,研究デザインに関しては,ランダム化や盲検化の有無,サンプルサイズ設計の根拠の記載が求められているも多くの論文で記載が不十分であることが明らかになった. 臨床医学研究ガイダンスをもとに,大学院「臨床試験方法論」の講義はシラバスを改訂し,学部「医学統計・医療情報」の講義は学則改正を実施し, 2023年度より新たなカリキュラムで講義及び医学統計実習を実施する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19の影響で班会議や国際学会発表等を対面で実施できないが,研究に附随する論文も掲載され,研究計画通りに概ね順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
基礎医学雑誌調査結果をもとに,基礎医学雑誌の統計手法の使用実態を分析し,その特徴をまとめるとともに,臨床医学雑誌の調査結果とも比較する.基礎医学研究者や医療系学部・大学院生が論文を読み書きする際に必要と思われる統計手法をリストアップし,基礎医学研究の計画・解析・報告のための生物統計報告ガイダンスを作成する. 作成したガイダンスをもとに,医学・薬学のコアカリキュラムを維持しつつ,それぞれの専門性に対応した生物統計教育のあり方・方法をカリキュラム化する.本ガイダンス並びにカリキュラムについて,国内外の関連学会及び医学・医療薬学・生物統計学の専門家から意見収集し総括する.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響で国際学会や国内出張・班会議を実施することができなかったため,旅費を次年度へ繰り越した.次年度に学会が開催されれば,予定通り旅費として計上する.最終年度であり、COVID-19が終息しない場合は物品費として変更する。
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