研究実績の概要 |
本研究の主要目的は、我が国の高齢者の多剤併用や睡眠薬使用おける骨折リスクを評価であり、レセプトデータベースを用い3つの症例対照研究と疫学研究におけるバイアス感度分析の方法の開発を行った。1)ナトリウムグルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤が骨折リスクと関連を2018年1月から2020年12月の入院患者を調査したマッチドケースコントロール研究を行った。マッチング後、症例396名、対照1081名を対象とし、SGLT2阻害薬の調整オッズ比は0.83(95%信頼区間:0.55-1.26)であり、股関節骨折のリスクは増加しないことが示された。また、SGLT2阻害薬の成分や他の抗糖尿病薬との併用によるリスクの増加は観察されなかった。2)睡眠薬と股関節骨折のリスクを評価するためにマッチド症例対照研究を行った。症例389例、対照1509例を対象とし、スボレキサントによる治療を受けた患者では、股関節骨折のリスクは増加しなかった[aOR:0.86、95%CI:0.61-1.20]。さらに、スボレキサントと他の催眠剤との併用は、リスクを増加させなかった。ベンゾジアゼピン系(1.01、0.46-2.22)、非ベンゾジアゼピン系(1.16、0.57-2.34)、メラトニン(1.80、0.82-3.94)の併用は、ソルボレキサントと併用した。また、スボレキサントを使用しないベンゾジアゼピンの使用ではリスクが上昇した(1.88、1.10-3.21)。3)股関節骨折とポリファーマシーを含む関連因子との関連を検討するためマッチドケースコントロール研究を実施した。股関節骨折患者34,717人と対照者34,717人を対象とし、抗パーキンソン病薬の使用は最も大きなオッズ比で、多くのカテゴリーで最も影響力のある変数であった。4)疫学研究のバイアスについて選択バイアスに着目し定式化し、感度分析方法を開発した。
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