研究課題/領域番号 |
19K12871
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
松橋 祐輝 早稲田大学, 理工学術院, その他(招聘研究員) (50754777)
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研究分担者 |
岩崎 清隆 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20339691)
坪子 侑佑 早稲田大学, 理工学術院, 次席研究員(研究院講師) (40809399)
挽地 裕 佐賀大学, 医学部, 准教授 (90380774)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 血栓性試験 / 冠動脈左主幹部分岐部病変 / ステント / 血栓 / 非臨床試験 |
研究実績の概要 |
冠動脈左主幹部は心筋全体へ送る血液の80%が通過する冠動脈の根本でありステントによる左主幹部分岐部病変の治療では、いかにステントによる血栓症や再治療を抑制するかが重要となる。左主幹部から左前下行枝にかけて存在する病変をステントで治療すると、必然的にステントが左回旋枝入口部を跨ぐように留置される。本年度は、前年度に開発した完全大気非接触型で冠動脈左主幹部の血流・血圧を創出する拍動循環回路を用い、ステント留置後の左回旋枝入口部で浮いたステントストラットに血栓ができるかを検証することを目的とした。具体的には、光干渉断層装置によって内腔を計測できる左主幹部分岐部血管モデルを作製し、冠動脈ステントを左主幹部から前下行枝にかけて拡張・留置した分岐部血管モデルを滅菌済の拍動循環回路に組み込んだ。健常ボランティアから採取した新鮮ヒト血液にヘパリンを加えて活性化凝固時間を150秒程度に調整し10分循環させた。試験終了後に、ステント留置部を光干渉断層装置を用いて観察し、0.5mm間隔でステントに形成された血栓量を定量化した。左回旋枝入口部を跨ぐように留置されて血流路に浮いた状態のステントストラット全体と、連続するステントストラットで下流側直後にあたる左前下行枝血管モデルに沿った同一ステント長において形成された血栓量を比較した。その結果、左回旋枝入口部流路で浮いたステントストラットで顕著に多くの血栓が形成されることが明らかとなった(p>0.05, n=6)。本研究から、ステントを分岐部血管を跨いて留置した状態にしておくことは、ステント血栓症のリスクの点から避けた方が良いことが明らかとなり、左回旋枝入口部を跨ぐステントストラットを排除するステント拡張手技を行うことが重要であると考えられた。今後、左回旋枝入口部にはみ出たステントストラットを排除する手技等が血栓形成低減に及ぼす影響を検証していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
体外の冠動脈の血流・血圧をヒト冠動脈の血行動態に合わせた循環環境において、滅菌済みの回路を用いて、ヒト健常ボランティアから採取した新鮮血液を循環させて左冠動脈分岐部血管モデルでステントに形成される血栓量を定量的に検証した初めて研究であり、ステントが浮く部分では血栓ができることを光干渉断層装置を用いた計測で明らかにできた。これによって、ステントによる治療手技が血栓形成の低減に及ぼす効果を定量的に評価する基盤を構築できた。
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今後の研究の推進方策 |
開発したこれまでにない非臨床血栓性試験システムで、より血栓形成を低減する治療手技の提案とその検証を行っていく。
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