研究課題/領域番号 |
19K12872
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
山田 雅之 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 認知症先進医療開発センター, 研究員 (40383773)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Gd / GBCA / MRI / AQP4 / rat / brain / EPMA |
研究実績の概要 |
本研究では、健常なWisar STラットを対象に直鎖型のガドリニウム(Gd)キレート造影剤(以下、GBCA)の多数回反復投与を施し、そのT1強調MR画像では小脳歯状核や淡蒼球において明らかな信号増強を認めた。高信号領域が小脳歯状核や淡蒼球である点で、神田らにより2014年にはじめて報告され、その後に多くの研究者によって明らかにされたヒト脳におけるLGBCA蓄積と類似する。すなわち、LGBCAを用いた造影MRI検査の臨床的重要課題である”Gdの脳内残存蓄積”の詳細を解明する目的において、本研究で作出した動物モデルは高い有用性が示唆された。 昨年度に引き続き当該ラット脳組織に関する電子線マイクロアナライザを用いた金属元素特異的微視画像解析を計画していたが、同解析は県外施設での実施が必須であり、コロナ禍による緊急事態宣言の複数回の発令により今年度の実施は見送らざるを得ない状況となった。このため、今年度はこれまでの研究遂行において検討課題とした『GBCAの脳内移行機序の解明』に関し、以下の実験研究を展開した。 脳脊髄液中でのGdの遊離が生じにくいとされるマクロ環状型GBCAの脳内移行とその分布をダイナミックMRIで捉えるイメージング動物実験技術を確立し、アストロサイトが有するアクアポリン4水チャネル(AQP4)の機能性がGBCAの脳内移行に大きく関与していることを実験的に明示した。 最終年度となる次年度には、Gd造影剤を用いる事なく同等の画像情報が得られるMR撮像技術の考案や、本テーマに関しコンピューターを活用したラット脳のMR画像解析等にも取り組む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍により生じた研究遂行への大幅な制約により当初の計画に変更が生じたが、その中でも概ね必要な実験を実施し、一定の成果を創出することができた。 GBCAが脳脊髄液からAQP4を介して脳内に移行するプロセスの可視化やそのメカニズムを解明する基盤研究として一定の意義を有する成果を得られた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究知見を踏まえ、脳内に移行したGBCAがどのように特定の脳組織に集積するのかについて、経時的にその移動や脳内分布をMRIにて捉える適切なイメージング動物実験技術の確立を目指した研究を推進することと、それを実現するためのコンピューター画像解析技術など、基礎技術の検討にも取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による種々の制約を踏まえた研究計画に変更により、次年度使用額が生じた。 最終年度となる次年度については、これまでの研究成果を集約・整理するとともに、残された課題であるGBCAの動的な脳内挙動をMRIにより詳細に可視化し、局所蓄積の機序を明らかにするための新たなイメージング動物実験技術を考案する。 さらに、GBCAを使用することなく同等の画像情報が得られる代替撮像技術の初期検討を含め、補完的な動物実験やコンピューター画像解析に関する基礎研究を実施するための費用を必要とする。
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