研究課題/領域番号 |
19K12873
|
研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
水上 拓郎 国立感染症研究所, 血液・安全性研究部, 室長 (60415487)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ワクチン / アジュバント / バイオマーカー / 有効性 / 安全性 / 評価法 |
研究実績の概要 |
我々は,インフルエンザワクチン接種後の肺組織の網羅的遺伝子発現解析によって,ワクチンの安全性評価に資するバイオマーカー群 (BMs)を同定し,BMsを用いた安全性評価法の開発とその作用機序の解明を行なってきた。そこで本研究課題では,システムバイオロジーを応用し,インフルエンザワクチン以外で感染症予防に重要なワクチンを用い,接種後の網羅的遺伝子発現解析と生体反応の変化を詳細に解析して,(1) ワクチンおよびアジュバントに共通して安全性評価が可能なユニバーサルバイオマーカー (UBMs) の同定を試み,UBMsを用いたワクチンの次世代安全性試験法を開発するとともに,UBMsの毒性発現における分子基盤について解析すること,及びワクチン接種後の免疫学的な反応におけるBMsと肺組織の役割を解析することを目的としている。 今年度は,得られたバイオマーカーを用い,安全性評価法の構築を行った。さらに複数のアジュバントを用い,細胞傷害性T細胞(CTL)などの誘導,IgG1/IgG2比や,白血球減少毒性,細胞毒性なども加味して評価した結果,安全性のみならず,抗体の誘導のみならずCTLの誘導にも関係する可能性の高いバイオマーカーを見出すことに成功した。また,IgGのみならず,IgAの産生にも関与するようなバイオマーカーを明らかにしつつある。現在,これらのバイオマーカーを総合的に評価する系についても開発を行うとともに,各種遺伝子ノックアウト細胞,及び遺伝子ノックアウトマウスなどを入手し,毒性発現機序の解明,免疫誘導性等についても詳細に検証することとする。 これらの研究により,ワクチン開発,ロットリリースが迅速化・効率化し,免疫学的にもワクチンに共通する分子基盤・免疫学的基盤の解明に繋がると考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね計画通り進んでいる。バイオマーカーそれぞれの特性の解明により,安全性のみならず,有効性等の評価にも応用可能な可能性があることが明らかとなった。遺伝子ノックアウトマウス等の導入及びその解析に関しては,諸事情により遅延する可能性もあるので,現在,培養細胞系の準備を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題に関しては,特に計画変更等はなく,引き続き,研究計画通りに進める。 一方,課題終了後,将来的にはこれらの評価系を実際のワクチン開発に応用し,ワクチン有効性の改善に向け新規アジュバントシーズの開発,ワクチンの安全性向上を目指した研究を本研究より発展させることができればと考えている。また,現在,SARS-CoV-2感染の流行に関し,様々な剤型のワクチンが承認されている。これら,まったく新しいプラットフォームのワクチンに関しても,我々のバイオマーカー等を用いた解析,あるいは,我々の手法を用いた解析により,既存のワクチンとの比較および更なる改良ができると考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた各種動物・ワクチンの購入等に関し,諸般の事情で遅延したため。
|