我々は,インフルエンザワクチン接種後の肺組織の網羅的遺伝子発現解析によって,ワクチンの安全性評価に資するバイオマーカー群 (BMs)を同定し,BMsを 用いた安全性評価法の開発とその作用機序の解明を行なってきた。本研究課題では,システムバイオロジーを応用し,インフルエンザワクチン以外で感染症予防に重要なワクチンを用い,接種後の網羅的遺伝子発現解析と生体反応の変化を詳細に解析して,(1) ワクチンおよびアジュバントに共通して安全性評価が可能なユニバーサルバイオマーカー (UBMs) の同定を試み,UBMsを用いたワクチンの次世代安全性試験法を開発するとともに,UBMsの毒性発現における分子基盤 について解析すること,及びワクチン接種後の免疫学的な反応におけるBMsと肺組織の役割を解析することを目的としている。 今年度は,UBMとして得られたバイオマーカーを用いて,in vivo及びin vitroの安全性評価法の構築を行い、複数のワクチン候補で検討した。その結果、これらのUBMはワクチンの安全性評価に有用であることが確認されると共に、さまざまな毒性パラメータ-と関与する可能性があることが示唆された。その一方で、一部のBMは、CTLの誘導やIgAの産生など、有効性にも関与することが示唆されつつある。各種遺伝子ノックアウト細胞,及び遺伝子ノックアウトマウスなどを入手し,毒性発現機序の解明,免疫誘導性等についても検証した。それぞれのUBMのより詳細な機能解析は今後、引き続き検証していくこととなるが、今後、新規ワクチンを含め、UBMを用いた有効性・安全性評価が可能となる。また、ワクチン接種後の分子基盤・免疫学的基盤の解明に繋がり、有効で安全なワクチン・アジュバント開発に寄与すると考えれた。
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